「嫌われる街」川崎のイメージを変えた消防士 風俗とギャンブルが同居する街の魅力とは
もちろん、地域とつながったり、地元に知人を作ったりすることは忙しい社会人にとっては容易なことではない。そもそも、実際どこから始めていいのかも悩むものだ。そこで今回は、川崎に移り住んで3年で、すっかり「川崎の顔」となりつつある消防士の田村寛之氏の例を紹介する。
田村氏が長男の小学校入学を前に勤務先のある横須賀から妻の実家がある川崎に引っ越してきたのは2013年の3月。実は最初は長男が、気管支が悪いということもあり川崎に対して悪いイメージを持っていた。が、「この後、川崎は子どもにとっての地元、郷里になる。そこで親が街をネガティブに思っていてどうすると思ったのです」(田村氏)。
「川崎野菜」に目を付けた
そこで田村氏は子どもと一緒に街に関わる活動をしようと考えた。生まれ育った横須賀では地域に関わる活動をしたことのなかった田村氏が、最初に始めたのは川崎駅周辺のゴミ拾いである。
ゴミ拾いに関しては2001年に原宿表参道でスタート、2003年からはNPO法人として全国に60カ所以上、海外にもチームがある「グリーンバード」という団体がある。長谷部健渋谷区長が区議会議員時代に立ち上げた活動で、田村氏はたまたま、活動にかかわっている知り合いがおり、川崎では自分がやろうと考えた。米軍の消防士である田村氏は1日交替で24時間勤務とオフを繰り返すという勤務形態。勤務自体は厳しいが、オフがきちんととれるため、活動がしやすいという側面もある。
毎月2回のゴミ拾いをしながら、目をつけたものがある。野菜だ。川崎と野菜、結びつかないと思うだろうが、2010年の農林業センサスによれば川崎市内には販売を行う農家が700戸弱あり、そのうちには専業農家も220戸弱。中には200年以上も代々農家を続けてきている農園もあり、2000年の農業産出額は約28億円に上る。キャベツ、トマトやブロッコリー、のらぼう菜、梨、パンジーなどの野菜、果樹、花卉に加え、一部には乳牛、豚、養鶏を行っている農家もある。
ところが、川崎駅周辺には地元野菜を置く店はない。「横須賀にいた頃には近くに直売所があり、八百屋には地元産野菜が売られていた。でも川崎ではどこを探しても地元産は売られていないし、使っているレストランもない。だったら、川崎産の野菜を取り上げることで地元にプライドを持ってもらうという手があるのではないかと考えました。川崎で野菜?という意外性だけで面白がってもらえるはずだと思ったのです」と田村氏は話す。
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