(第30回)2010年度新卒採用戦線を総括、2011年度の採用戦略のテーマを探る(前編)

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図3:企業の研究室訪問を受けた学生が回答した
「研究室訪問による志望動機の形成度合い」
 ここで興味深い調査結果をご紹介しよう。「研究室訪問を受けた学生が訪問した企業に応募(自由応募)しようと思うか」と訊ねたところ、「応募すると思う」が39%、「検討する」が37%、「応募しないと思う」が15%、「まったく未定」8%、「その他」1%となり、76%の学生が訪問企業に対して「なんらかの興味」を示したという結果が出たのだ(図3)。

 大手製造業が技術系採用を減らすことを予想し、技術系の採用意欲が高かった大手製造業以外の企業にとって、ひとつの誤算があったとすれば、就職ナビを使ってプレエントリーが伸びた学生層と、そのような効果が期待するほど得られなかった学生層が現われたことではないだろうか。しかし、そういった“手堅い就職活動”に取り組んだ学生がすんなりと大手企業に就職先を決めることができたわけではない。というのも、社員数1001~5000人の大手企業の技術系採用は「増やす」と回答した企業8%に対して「減らす」は15%。5001人以上の企業でも、「増やす」と回答した企業4%に対して「減らす」は14%と技術系の採用数そのものは大幅に縮小していたからだ。

 しかし、その一方で社員数が5001人以上の企業の研究室訪問実施率は80%を優に超え、技術系採用をしている企業全体の平均の57.7%を大きく上回っていた。つまり、大手企業は採用数を減らすにもかかわらず、理系学生とダイレクトにコミュニケーションする活動に対してはエネルギーを注いでいたわけだ。
 大手企業は自社の分厚いリクルーターという社内資源を存分に活用し、“減らすが(必要な人材は)採る”という「人材の質重視の採用」方針のもと、自由応募から推薦へのシフトを含め、学生とのダイレクトコミュニケーションを重視した“理系採用力”の差をまざまざと見せつけた。
採用プロドットコム株式会社
(本社:東京千代田区、代表取締役:寺澤康介)
採用担当者のための専門サイト「採用プロ.com」を運営。新卒、中途、派遣、アルバイトなどの採用活動に役立つニュース、情報、ノウハウを提供している。

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