本当の「ヒット曲」は、どこに隠れているのか CD販売でランキングを決める時代は終わった

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ビルボードのHPではチャートをデータごとに並び替えできる。データはパートナーの協力によるものだ。サウンドスキャンジャパン(CD販売数) ニールセン(ダウンロード数、YouTube 視聴回数)グレースノート(CDデータのPCへの読み込み数)プランテック(ラジオ放送回数)NTTデータ(ツイート数)プチリリ(定額配信における歌詞表示回数)といった具合だ

このようにして得られた各項目の数値を組み合わせ、数カ月分のサンプルを作り、特定の指標に偏り過ぎていないかなどをチェック。最終的に100位までを公表している。

ちなみに、最近では握手券などの特典を付け、複数のCDを購入させる「AKB商法」が批判されることも多いが、こうした曲もユーザーによく聴かれているという。「CDの読み込み回数で上位にくるケースが多く、ちゃんと聴かれている。複数枚商法が一概に悪とは言い切れない」(磯崎氏)。

複合チャートからは変わったヒットの形も見えてくる。たとえば、西野カナの「トリセツ」。20週以上もランクインするロングヒットだ。

同曲はライブツアーの最終日に初めて披露され、まずはツイート数が急伸して話題になった。そこからYouTubeの視聴回数が増えて、販売につながっていった。SNSが火をつけたヒットだったわけだ。

そのほか、ONE OK ROCKの「Wherever you are」も珍しい例だ。この曲は昨年12月にNTTドコモのCMに使用されたことをきっかけにチャートに登場し、2月現在もTOP10圏内を維持している。発売は何と2010年6月と5年以上も前だ。しかもアルバムに収録された曲だった。

新しい音楽業界のサイクルを作る

このように、ファンにしか知られていない曲でも、SNSで話題になったりYouTubeで見られることで、ダウンロードやCD購入につながっていく。2014年発売の「R.Y.U.S.E.I.」が2015年の年間1位を獲得したことからみても、発売日とヒットの関連性は薄れつつあるのかもしれない。

磯崎氏も「SNSの登場や、CDショップにない曲を手軽にダウンロード購入できるようになったことなどで、昔に比べてロングヒットの傾向は強まっている」と指摘する。

ビルボードが目指すのは、多くの人が共感できるチャートを広め、音楽業界における新しいサイクルを作り出すことだ。

1990年代後半のCDが売れに売れていた時代、CDチャートで1位を獲得した楽曲はさまざまなメディアで紹介され、その効果で翌週の販売も増加する、というサイクルがあった。ただ、1998年以降、CD販売がピークアウトし、さらに着うた、ダウンロードなどが増える中で、サイクルの影響力は失われていった。

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