本当の「ヒット曲」は、どこに隠れているのか CD販売でランキングを決める時代は終わった

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現在のヒット曲はCDだけでなく、多方面で楽しまれている。そこで、「さまざまな形で曲を拾い上げ、多くの人が共感できる複合チャートを作りたい。そうすれば、何十週もランクインするロングヒットの曲がニュースになったりする。また、ユーザーが関心を持ち、SNSやYouTube視聴などでアーティストを応援するようになれば、販売につながるサイクルも作れるのではないか」(磯崎氏)。

できるだけ多様なデータを反映するため、ビルボードは1月、新たにヤフー傘下の動画サービス「GYAO(ギャオ)」の視聴データを加えた。定額配信サービスにおける試聴データを提供してもらえるように各社と交渉を進めるなど、今後もデータの拡充を進める考えだ。

複合チャートは音楽業界の指針になれるのか?

業界関係者は現在のチャートをどうとらえているのか。業界のビジネスモデルに関してさまざまな情報を発信する音楽プロデューサーの山口哲一氏は、CDチャートの形骸化を指摘する。

「CD販売のチャートは、発売週の購入金額を現しているにすぎない。昔はCDチャートに登場する曲が人気曲だったが、今は違う。形骸化したランキングがユーザーの興味を減衰させている。スマホの時代になり、音楽の聴き方は変わったが、音楽業界もマスメディアも対応できていない。チャートはその象徴だ」。

アップルミュージックなどの定額配信サービスは、課金に苦労しつつも、徐々に広がり始めている

それでは、今後はどういったチャートが求められるのか。山口氏が主張するのはユーザー目線のチャートだ。「以前はマスメディアによる一方的なランキングでもよかったが、今はユーザーも発信する時代。SNSによる口コミのチャートや、実際に聴かれた再生数のチャートのほうが重要だ。年齢別、地域別といった多様なデータを取得できるようになっているし、そうしたチャートの方がユーザーの興味を喚起する」(山口氏)。

2015年はLINEミュージックやAWA、アップルミュージックなどの定額配信サービスが次々と立ち上がり、音楽業界は「定額配信元年」を迎えた。音楽の聴き方、業界のあり方が変化する中で、ヒット曲の姿、生まれ方もさらに変わっていくだろう。チャートもさまざまな形が登場するかもしれない。

現時点ではまだ認知度が低い複合チャートだが、音楽ファンをはじめ、広く注目を集めることで、業界の新たな収益サイクルを作り出すことができるのか。これから果たす役割は、決して小さくなさそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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