ニッポン国力増進計画《若手記者・スタンフォード留学記 39》

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 前回、日本が国連の常任理事国に立候補したときに、ASEANのどこの国も日本を支持してくれなかったというようなことは、なくなると思います。ただ、おカネを出すだけでなく、軍事の面でも力と意思をもたない限り、日本はアジアのリーダーとして認められないのではないでしょうか。

第3に、国際的な警備活動のために、より機動的に動けるようになります。

ソマリア海賊対策、インド洋の警備など、世界的な問題に、軍事力をもって日本がより迅速かつ積極的に介入するようになれば、日本の評価、ソフトパワーも上がると思います。日本が平和な国家であることは、もはや、中国・韓国を除き、大半の国が認めてくれていると、私は思います。「日本の常任理事国入りは当然」という空気を自ら作り出す必要があります。

念のために補足しておくと、集団的自衛権の行使、すなわち、どの案件に自衛隊が参加するかは、日本の国益と照らし合わせて、ケースバイケースでその都度議論していけばいいと思います。

その際、正確な判断をするためにも、米国依存から脱し、能力のある独自の情報機関の設立は必須でしょう。独自の情報なくして、独自の意思決定はできません。本当に日本が軍事介入すべき案件は何なのか、じっくり議論できる基盤があれば、米国の軍事行動にただやみくもに追従するというシナリオを避けられます。

オプション1の中身をまとめると、以下のようになります。

集団的自衛権の行使を認めて、日米同盟を磐石にして、中国との軍事バランスを保つ。そうすれば、中国がさらに高度成長を続け、さらに軍事力増強を進めたとしても、今後数十年は、中国に対して軍事的に優位に立てる。中国は伝統的にリアリズム(性悪説に立ち、軍事力こそが、国力の源泉であるという考え)という立場をとってきた国で、軍事力を政治経済に生かそうとする傾向が強いのが特徴です。安全保障さえ磐石であれば、中国と安心して商売ができるというわけです。経済の相互依存が進めば、両国の関係は自然とよくなるという一部の発想は、あまりに楽観的すぎます。

日本のODAでつくられた中国の豪華な空港と地下鉄

2つ目のオプションは、ライバル国の弱体化です。

日本の場合、今のライバルは、軍事的にも経済的にも、やはり中国でしょう。中国に対し、ことさら敵意をあおるのはよくないですが、つねに警戒はしておく必要があります。

伝統的な、ライバル弱体化の方法のひとつは保護貿易ですが、日中の経済依存関係を考えると、これは自殺行為です。保護貿易で中国の経済が弱ったとしても、日本の経済がもっと弱ってしまうかもしれません。

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