ニッポン国力増進計画《若手記者・スタンフォード留学記 39》
衰退からよみがえった1980年代のアメリカ
残念ながら、日本の国力は今、経済を中心に衰退トレンドにあります。
では、古今東西、経済の衰退に直面した国は、どんな手を打ってきたのでしょうか?
国際政治経済学の泰斗、ロバート・ギルピン・プリンストン大学教授によると、経済衰退国がとりうるオプションは3つあります--それは、1)軍事力の強化、2)ライバル国の弱体化、3)自国経済の再活性化、の3つです。
この3つのオプションをたくみに使い分けたのが、1980年代のアメリカです。
1980年代初めのアメリカは、不況のどん底で、軍事面ではソ連、経済面では日本というライバルに追い上げられていました。そこで、アメリカは上記の3つのオプションをたくみに組み合わせたのです。
まず、軍事的な脅威については、赤字拡大もいとわず、軍事支出の拡大に踏み切り、ソ連を一気に突き放しました(オプション1の活用)。
次に、経済面でのライバル日本に対しては、プラザ合意によって、大幅な円高を受け入れさせ、輸出競争力をそぎました。加えて、日本の貿易政策にいちゃもんを付け、日本の貿易黒字を減少させようとしました(オプション2の活用)。
そして、ライバル国を牽制する一方で、経済をよみがえらせるため、規制緩和、労働組合解体などの抜本的な改革に取り組みました(オプション3の活用)。
こうした諸策が実り、90年代に入ると、軍拡競争に敗れたソ連は崩壊し、プラザ合意をきっかけにバブルに突入した日本経済はバブル崩壊とともに失速し、規制緩和や減税によりサプライサイドを強化した経済は、IT革命の波にのり、未曾有の繁栄を謳歌しました。
アメリカは3つの戦略をうまく組み合わせることで、見事に経済的な衰退から復活したのです。
日本の軍事力を簡単にアップする方法
今の日本も、1980年代のアメリカのように、この3つの戦略をうまく組み合わせる必要があります。
まずひとつに、私は日本は、軍事力強化を進める必要があると思います。経済力の低下を軍事力の強化で補い、国力を維持するといういたってシンプルな論理です。