「謎の小論文」があぶり出す、受験生の"本性" 凍り付く学生が続出、話題の「奇問」を検証

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私は常日頃、医師に必要な能力・資質として、以下の8つを挙げ、学生を指導している。

①患者の要望に耳を傾け正しく応える力(聞く能力)
②正当な注意力、判断力(科学的判断にもとづく正しい行為から逸脱しない能力)
③正当な開拓精神(不確実性に立ち向かう能力)
④研鑽能力(医師としての技量を磨き深める能力)
⑤利益衡量能力(複数の価値が対立している場合にそれぞれの利益を調整し、より良い結論を導く能力)
⑥情報収集力(新しい知見や情報を収集する能力)
⑦空間把握能力(腹腔鏡手術などで要求される能力)
⑧推理能力(患者が訴える症状から病巣を推理する能力)
参照:「わが子を医学部に入れる」(祥伝社新書)

 

そして、根底にあるさらに重要な、幹となる資質は「公共性・公共心」だ。これは「正義」を追求する心と言ってもいい。具体的に言うと、目の前に困窮している人、差別を受けている人、不公正な扱いを受けている人がいる場合に、その不公正を正す。そんな心構えが必要なのである。

1950年代の「アメリカのリアル」に思いを馳せてみる

少年の視線の先にはどんな風景があるのか

そういう観点を踏まえ、さらに1950年代のアメリカという制約を考慮して本問を見ると、この少年の目の前に広がるのは「2つのアメリカの様相」であると、仮説を立てられるのではないか。

まず1つは、戦後5年以上経ち、経済が隆盛で急成長しているアメリカである。1950年代のアメリカは、第2次世界大戦の戦勝国として黄金期を迎えていたはずだ。白人の一般家庭には、テレビ、冷蔵庫、食洗器、大型自動車などが普及し、「豊かなアメリカ」の顔があったことを想像できる。

しかしながら、その繁栄の一方でもう1つの顔があった。私が強調したいのはむしろこの陰の部分である。つまり、この少年の目には、アフリカ系アメリカ人を中心とした非白人人種が、貧しさと困窮の中で暮らしている姿が映っているのだと考えることができる。

駅の待合室、水飲み場などの公共施設には「白人専用」や「黒人専用」と記載された表示板が掲げられ、バスの座席は前が白人用、後がそれ以外といった具合に分断、白人の席に空席があろうと、白人でなければ後方に立つことを余儀なくされる……。それが当時のアメリカのリアルだ。

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