両者間の経済的格差も大きかった。大都市中心部にあるアフリカ系アメリカ人居住地区・ゲットーに住む者は、都市のほかの地区が受けられる公共サービスを受けられず、極貧状態に陥り、失業、犯罪、麻薬中毒、アルコール中毒などの果て、早期死亡も多発していたと考えられている。
話をもとに戻そう。私が今回の小論文に解答するならば、この少年が見つめているのはこの「陰のアメリカ」だと考えてみる。
眼下の路地、アフリカ系アメリカ人の子どもがあらぬ嫌疑をかけられ、警察に拘束されているさまを見つけたのかもしれない。彼は子どもながらに心が穏やかではない。それは、肌の色が「白」か「黒」かの違いで、人間が差別を受け、同じ人間として公正な扱いを受けていないことに不条理を感じているからである。そして、この現実に直面し自分に何ができるだろうかと思慮しているのである。
少年の眼前に広がるのは、受験生の心の風景
最後にひとつ、付け加えておかねばならない。それは、この小論文を記述する際に意識する「少年」とは誰かということである。
指摘されればハッとするのだろうが、それはほかならぬ、受験生自身なのである。言い換えれば、受験生自身が少年の視線を借りて、答案用紙に心の中を描写しているのである。だから、少年の眼前に広がっている世界は、まさに受験生の心の中の風景なのである。
以上、今回はあえて解答例を書かず、私の考えている一端を示すにとどめたい。受験生は、この難解な小論文にさまざまなことを記述したであろう。楽しいこと、夢にあふれること種々の考えを書いたであろう。先に記したように、人の考えはさまざまであり、解答の仕方もそれでいい。
ただ、これだけは言える。記されたその内容が、ありのままの受験生を反映し、そのありのままの姿が医師の能力・資質になじんでいれば、より望ましいのではないか、ということである。
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