松下幸之助は「人間は宇宙の王様」と考えていた どの人も王者と思って接するべし

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人間は王者である、偉大な存在であると考えれば、「そうだ、この人に意見を尋ねてみよう、この人の話を聞いてみよう」ということになる。あるいは、この人に仕事を任せてもしっかりとやってくれる、熱心に取り組んでくれるという気持ちになる。

発想の根底にこうした人間観がないと、深い経営理念は決して生まれてこない。

また、こうした人間観を持たずして信じるとか信頼するとか言ってみても、到底本物ではない。相手をつまらないと思って、それでその人を信頼するということはありえない。提案制度も事業部制も、単に、経営に役立つからという程度の発想では、決して成功しない。

もし松下幸之助と同じことをやったとしても、この人間観がなかったとすれば、まったく正反対の結果を招くことになるだろう。周囲の人は感動するかわりに不愉快になり、自分のせっかくの日々の積み重ねの結果も悪い方向へと進むだろう。

経営者にとって最も大事なもの

「経営者にとっていちばん大事なのは、この人間観やな。人間をどうみるか、どうとらえるか。そこをきちっと押さえたうえで経営を進めんと、大きな成功は得られないと思う。すべての経営理念の出発点はここからやで。

きみ、ここはしっかり覚えておかんとあかんよ。まあ、この人間観は経営における第一ボタンやな、早い話が。な、最初を掛け違えると、きちんと服が着れんのと同じやがな」

経営のみならず、どのような人間観を持つかということは、いつの時代にも通じる普遍的な成功の秘訣であるように思われる。

江口 克彦 一般財団法人東アジア情勢研究会理事長、台北駐日経済文化代表処顧問

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えぐち かつひこ / Katsuhiko Eguchi

1940年名古屋市生まれ。愛知県立瑞陵高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒。政治学士、経済博士(中央大学)。参議院議員、PHP総合研究所社長、松下電器産業株式会社理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長など歴任。著書多数。故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている。23年間、ほとんど毎日、毎晩、松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者であり、継承者。松下氏の言葉を伝えるだけでなく、その心を伝える講演、著作は定評がある。現在も講演に執筆に精力的に活動。

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