《名を捨てて実を取る》体裁よりも、実質的な利益を得ることを選ぶほうが、賢明であるということわざがあります。たとえば、歴史と伝統に誇りをもっていても、将来のために手放す判断は正しいということ。会社であれば「主力事業」であっても「売却」するのが妥当という判断。ただ、日本企業は
「長年、会社の収益を支えてきた事業を売るなんて、とんでもない」
と代々の土地に愛着をもつ人のように、伝統事業にこだわるのが当たり前と考えられてきました。客観的に事業の置かれた状況を判断できない、あるいは事業を売却したのに売却先で大きく成功してしまったら社内で批判される……といった消極的な発想から「飼い殺し」のような判断をしてきたのかもしれません。
今後、《名を捨てて実を取る》判断をする会社が増える
ただ、徐々に状況は変わってきました。《名を捨てて実を取る》という発想で事業の売却益を使って「新領域」に事業を展開するのです。昨年度、取材した「ノーリツ鋼機」の決断もその一例。
1951年に創業者が写真処理分野の製品を開発。その後も同分野で確固たる地位を築いてきました。現在も「ミニラボシステム」と呼ばれる現像・プリント機器などのイメージング分野でトップメーカーとして広く認知されています。
そんな歴史ある主力事業の譲渡を昨年、取締役会で決議。理由はデジタル化の進展や需要構造の変化などにより受注減が続き、売上高が最盛期から大幅に縮小。今後の主力事業は別の領域にすべきと判断。イメージング分野の事業を株式譲渡し、医療サービス、シニアビジネス、機能性素材などのさまざまな成長領域へシフトすることにしました。
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