中国経済は、短期中立、中長期では悲観?(下)《若手記者・スタンフォード留学記 34》



 1つ目が、エリート間の団結。

共産党の独裁体制にとっての最大の脅威は、エリート層の間でイデオロギーや政策を巡って分裂が起きることです。そこで、共産党の門戸を広げ、学歴の高い知識人やビジネスマンらを、こぞって共産党に入党させました。民主化運動を先導しかねない、潜在的な不満分子を、既得権益に取り込んだわけです。

2つ目が、経済的な利益供与。

現体制に対する、エリート層の忠誠心を高めるため、金銭的なインセンティブを与えました。具体的には、政府系企業の幹部ポストへの天下りを斡旋するとともに、エリート層の家族、親戚に対して、さまざまな利益を供与しています。

3つ目が、選別的な弾圧。

民主化に関する運動や言論は、徹底的に弾圧する一方、政治を除く分野では、国民に言論の自由や娯楽をふんだんに与えて、うまく”ガス抜き”しています。これは、あらゆる自由を奪って、その鬱屈が民主化運動として爆発したソ連の失敗から学んだ教訓です。事実、中国でも、ポルノビデオなどの娯楽は、意外なほどに自由です。

4つ目が、戦術的な柔軟性。

現在の体制は、「民主化は認めない」という点で、戦略的には柔軟性はありません。しかしながら、「民主化につながらない」という条件付で、必要とあらば、あらゆる改革を柔軟に実施するのはやぶさかではない。その意味で、戦術的には柔軟性があります。

天安門事件以後の20年、共産党はこれら4つの原則を破ることなく、高い経済成長を実現することができました。しかし、今後さらなる経済成長を続けるには、この4つの原則を揺るがす、大胆な改革が必要になってきます。

たとえば、企業セクターの生産性向上には、民間企業の繁栄が欠かせません。そのためには、国営企業への優遇撤廃、金融セクターなど国営企業が牛耳るセクターへの新規参入などが必要です。

しかし、もし国営企業の独占が破られれば、賄賂や天下りポストが減り、党員に与えるニンジンがなくなってしまう。となると、「エリート間の団結」と「経済的な利益供与」の原則が壊れかねません。

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