中国経済は、短期中立、中長期では悲観?(下)《若手記者・スタンフォード留学記 34》



 同じ話が、国全体についても言えて、高齢化が進むと、その国の貯蓄率は減少します。実際、日本でも、この理論どおりに、昨今、貯蓄率の大幅な減少が起きています。きっと将来、同じことが中国でも起きるでしょう。国内の貯蓄は、投資の原資になりますので、貯蓄の減少は、利子率の上昇を通じて、将来、投資を抑制する可能性があります。

今のところ、中国は貯金大国なので、こんな心配は杞憂に思えますが、一応、頭には入れておくべきポイントの一つです。

以上、長くなってしまいましたが、「労働力人口の頭打ちと高齢化」は、医療費・年金コストの急上昇、安い労働力を武器にしたビジネスモデルの弱体化、そして、貯蓄率の減少を通じて、中長期的な中国の経済動向に暗い影を落とすと思います。

「超大きな政府」へと突き進む中国

中長期的な中国経済の4つ目のリスクは、中国がより社会主義化していることです。言い換えれば、経済における政府の役割が膨張しているのです。

一見、資本主義へ突き進んでいるかに見える中国が、実はより非資本主義化している。それを、実証的な分析で示したのが、MITスローンスクールの黄亜生(Yasheng Huang)助教授です。以下、彼の著書『Capitalism with Chinese Characteristics』(未訳:ケンブリッジ大学出版)を参考に、その要旨をまとめてみます。

1979年の改革開放以来、中国は未曾有の成長を遂げてきたわけですが、実は、1989年の天安門以前と以後では、その成長の質が全く異なっています。

1980年代は、地方と都会がバランス良く成長し、企業家精神も花開きつつあった。当時、中国の経済政策を切り盛りしていたリーダー陣は、趙紫陽を筆頭に、地方政治の経験が豊富で、地方に理解があり、リベラルな経済改革を推進しました。

しかし、1989年の天安門事件をきっかけに、この流れが逆転します。

1990年代に、国を指揮したのは、江沢民、朱鎔基ら上海地盤の人間。彼らは、国のトップに立つやいなや、自らが実施した上海の発展モデル--都市優遇、積極的な政府の介入、投資主導の成長戦略、外資優遇、民間・中小企業軽視--を国政にもあてはめました。

彼らは、地方に重税を課し、そのお金を、上海、北京など都会の開発に投じました。あわせて、民間企業への融資条件を厳しくする一方、政府系企業、外資系企業を大いに優遇。結果として、国営企業と外資系企業が牛耳る、いびつな経済ができあがり、阿里巴巴(アリババ)など、中国産の有望な民間企業は、規制のゆるい香港に逃げ出してしまった。

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