集中と慈悲の心を体験する
前野:井上さんの教えていらっしゃるトレーニングはどんなものですか?
井上:われわれの行っているトレーニングは3回に分かれています。1回目に「ポジティブ心理学」についてお話しし、マインドフルネスを体験していただきます。2回目はコンパッション(共感と慈悲)についてトレーニングします。最終回は感謝について。これはある体験をしていただく最後のトレーニングです。内容はサプライズなので、ここでは伏せておきます。
前野:マインドフルネスはビジネス界でも注目されていますね。
井上:はい。米国のGoogleが行っている社内研修「Search inside yourself(SIY)」は、まさにマインドフルネスのトレーニングですね。「心を意識的に今ここに集中し、評価や判断を行わない」というトレーニングですが、われわれはお鈴(おりん)の音を使った「集中」や、とあるものを使ったマインドフル・イーティングの体験などをしていただきます。ただし、幸せになるにはマインドフルネスだけではダメで、あるものをプラスしないと「幸せ」にはなれないんですね。集中力を高めることは、いいことにも悪いことにも活用できる。そこで「慈悲」が重要になります。
幸せを考えた時に、世間の価値観を少し超越してしまった仏教の意義というのは、ここで初めて意味が見えてくるのではないかと思っています。
前野:なるほど、そこで慈悲が出てくるのですね。確かに、幸福学を研究するようになってから、お坊さんの説法の意義がわかってきました。われわれは科学的に幸せの解明を行っていますが、心を整えて幸せになった後でこそ、本質的な心の問題に対面できる。仏教の教えとは、幸せと本質というふたつのバランスだな、と思うようになりました。
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