前野:やってみてようやくわかりますね。幸せの因子を満たすことが幸せなのだと強く感じます。
井上:成功するから幸せになるのではなく、幸せになると成功するのだと思います。
前野:そうですね。幸せのためには、おカネを求めることに偏りすぎないことが重要なのですが、これは必ずしも清貧という意味ではありません。おカネばかりを求めなくても「幸せはほかのところにあるよ」ということなんです。おカネがファーストプライオリティではないだけですが、むしろ幸せになった結果、儲かる可能性もありますよ。
老後不安の解消とブータンの「家族」
井上:生活の維持を考えると、やはりおカネに関する不安がどうしても切り離せない。特に老後不安がおカネを目指す要因になっていますよね。
前野:ブータンは「国民総幸福量」の増加が政策となっている国ですが、彼らに「あなたが、いざという時、困った時に本当に信頼できる人は何人いますか?」というアンケートを取ったそうなのです。何人だったと思いますか? 平均50人です。
井上:50人?! 日本だったら数人かあるいは両親、奥さんだけ、なんて人もいるかもしれませんね。
前野:ブータン人は家族が多いんですよ。尋ねてみると、友達も近所の人も家族だと答えます。日本のGDPの20分の1の国でも、老後に不安なんかない。50人も助けてくれる人がいたら、安心ですよ。寺院に行くと、ガイドさんが「自分のことも祈っていいけど、世界の幸せも祈りなさいね」って言うのです。もちろん、普通の人がみんな、世界の幸せを祈っている。利他的な国ですね。幸せになる要因を満たしている。
井上:先生の本にもありましたけど、「経済力がつけば幸せになれる」ということを追い求めることから、そろそろ「本当の幸せはそこではない」ということへ交通整理したいですね。
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