【産業天気図・ビール】値上げ浸透までは混乱続く、08年度の天気は「曇り」

今2008年度のビール業界は「曇り」となりそうだ。値上げを背景にビール需要が縮小、コストダウンでようやく増益にこぎ着けられるという状況になりそうだ。
 2月にキリンホールディングス<2503>がビール系飲料を3~5%値上げしたのに続き、アサヒビール<2502>も3月に値上げを実施した。サッポロホールディングス<2501>とサントリーも4月から値上げを開始するが、サントリーだけは業務用を中心とした樽と瓶だけが対象。缶の値上げについては「6月以降に実施する」(サントリーの佐治信忠社長)と明言しているものの、決定はしていない状況だ。
 ビール4社の足並みがそろわない中、すでに市場には変調が起き始めている。1月のキリンのビール出荷数量は、値上げ前の駆け込み需要の影響で前年同期比5割増まで膨れ上がった。アサヒも2月の出荷数量は同5割増程度となっており、酒類卸の買いだめが鮮明となっている。
 そうはいっても、そろそろキリンは買いだめ在庫が底をつく状態で、量販店を中心に本格的に値上げ交渉が始まりそうだ。しかし、イオンを中心とした大手量販店では、値上げに反対する動きが依然として根強い。一部の特売スーパーでは、販促の回数を減らすキリンの姿勢に反対し、年数回の特売時以外はキリンのビール系製品を販売しないなどの動きも出てきている。アサヒやサッポロ、サントリーも値上げに苦戦するのも、不可避だろう。週替わりで展開される派手な店頭販促が減ることもあって、08年度のビール総需要は、これまでの微減路線から、さらに縮小が加速するだろう。
 このため、08年度のビール需要の天気は「土砂降り」となる。しかし、業界全体で見ると、徹底したコストダウンでしのいで「曇り」にとどまると予想される。各社とも新製品の数を大幅に減らし、特売に使う販促費も抑制する見通しで、07年度までの激しいシェア争いから一転、コストダウンに向かうことで広告費や販促費の抑制が期待できる。アサヒとキリンが年1000億円規模の広告・販促費を投入していることを鑑みると、長期的にはかなりの収益改善が期待できる。
 皮肉なことだが、原料高という試練に立ち向かうことで、長らく続けてきたシェア争いという消耗戦の悪循環を断ち切る動きが出てきている。ビール業界は転換点を迎えているのかも知れない。
【前田 佳子記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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