政府はこうした企業の慎重姿勢を打開し、国際競争力を高めようと新成長戦略にコードの策定を盛り込んでいます。細則の規定集ではなく原則を示したもので、細かいルールは定めていません。原則を示し「あとは自分で考えろ」というスタンスです。これを「プリンシプル・アプローチ」と言います。
人材不足で取り合いに?
大きな基本原則が5つあり、
に関する指針が示されています。コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain)の精神の下、原則を実施するか、さもなければ実施しない理由を説明するか求めています。
コーポレートガバナンス・コードの指針を実行するため、上場企業で注目度が高いテーマのひとつが社外取締役を2名以上選任するということ。
「業務執行の妥当性」の監督を強めるため、公正な観点で経営を監督し透明性を高め、時に積極的にリスクを取るためには、「部長から役員」という社内ルートだけではダメと強く考えてのことのようです。
専任で「それなりに経営者としての責任を果たせる人材が在野にいないので、人材紹介会社など通じて取り合いになっているのが実情。
2015年度時点で2人以上の社外取締役を置くことができている上場企業は3割に満たない状態。ゼロの企業は約4割もあります。東証1部上場企業だけでも2000人以上の新たな社外取締役の確保が必要で、企業が来年の株主総会までに人材を確保するのは難しいとの指摘もあります。なので、当社にも専任の社外取締役の紹介依頼が頻繁に舞い込みます。
だだ、部長から役員に「社内昇進」する可能性を秘めた予備軍が気になるのは別のコードのようです。たとえば、「取締役になったときの準備トレーニング」。役員になれば役割・責務に係る理解を深めるとともに、必要な知識の習得や適切な更新等の研鑽に努めることが求められます。さらに取締役会で、取締役の勉強の状況を確認しなければならないという義務も負います。非常に細かい報告を強いられるので面倒に感じる人も少なくないようです。
ただ、面倒なだけではなく、事業執行から離れて、株主視点から経営判断をするという役割への変化がつらいと感じる取締役も相当増えているようです。今まで以上に、何事も株主視点から考えて妥当か?との意見を求められます。ある取締役は株主視点で自分が以前に担当していた事業部門からの撤退を提案。会社の収益には貢献できたものの「これまで積み上げてきたものを踏みにじるようになってしまったのですね」と過去の部下たちに冷たい視線でみられることがつらい……と語ってくれました。
それだけ会社の経営判断がステークホルダーからすればずれていたのかもしれませんが、部長の延長線で役員になると、戸惑うのは無理もありません。明らかに違う立場への転身である、というくらいの覚悟が必要なのかもしれません。
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