なぜ増殖?「取締役はつらいよ」という悲鳴 コーポレートガバナンス・コード導入の余波

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先ほどのFさんの周辺でも懲罰事件がありました。ちょうど、数カ月前に学生時代の友人であったSさんが会社の不祥事の責任をとって辞任。Sさんは、1年前に専門商社の取締役(営業部門)に就任。その抜擢は同世代でも羨望の眼差しを浴びたもの。本音では妬ましいと感じていた同期の仲間もいたようです。

取締役になるも、1年で辞任……

Fさんもお祝いの言葉を送りつつ

<<自分より先に役員になるとは悔しい気持ちが芽生えたのが本音>>

でした。ところが部下の不正取引を見抜けず、株主総会で矢面に立つことになりました。ところが、株主説明が十分にできずに総会が紛糾。その責任を取って辞任を余儀なくされたのです。華麗なる抜擢からたった1年後に、こんな状況になるとは想像ができたでしょうか。

もし、営業部長のままであれば退職まで追い込まれることはなかったかもしれません。そう考えると、役員という肩書きを得る一方でついてくる責任は大きく、内外で大きく叩かれて、再起できない状態になる可能性があることを痛感させられます。

さらに世間では役員になることが不安になる取り組みも進んでいます。それが「コーポレートガバナンス・コード」の適用です。

みなさんはスチュワードシップコードという名前をご存じですか? ガバナンス(統治)への取り組みが不十分であったことが、リーマン・ショックによる金融危機を深刻化させたとの反省に立ち、英国で金融機関を中心とした機関投資家の「あるべき姿」を規定した指針のことです。対して、企業経営のガバナンスであるべき姿を規定したのがコーポレートガバナンス・コード。日本では2013年に政府が閣議決定した「日本再興戦略(Japan is Back)」及び2014年の改定版で、成長戦略として掲げた3つのアクションプランのひとつ「日本産業再興プラン」の具体的施策として2015年から上場企業で指針として反映されています。

こうした指針が必要になった背景には、日本企業の経営者が「安全運転しすぎる」部分があるから、ということがあります。

企業が資本を効率的に使っているかどうかを表す株主資本利益率(ROE)は、日本企業においては約8%と米国(約17%)の半分以下。日本企業の経営者がリスクを恐れ、企業のM&Aや新規設備投資など攻めの経営を躊躇したり、収益を株主への配当や従業員の賃上げに回さず、内部留保をため込んだりしているのが実情です。

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