学生運動が起点、いま台湾は激変前夜にある 「第3勢力」が与える影響力は大きい

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そして翌年には、さらに反政府運動は高まりをみせる。2014年3月、立法院の委員会において進めていた中国との自由貿易協定「ECFA(両岸経済協力枠組み協定)」の審議を、国民党側が一方的に打ち切ったのだ。

審議打ち切りは不当で、内容も公開されていないとして、大学生を中心とする若者たちが立法院内に侵入。建物を占拠する事件が起きた。これが世界的にも有名になった「ひまわり学生運動」だ。主導する学生たちは、もともと政治に対しそれほど高い関心を持っていない層だった。

彼らは中国との関係強化に走る国民党に警戒心を持ち続け、政治そのものにも参加するようになった。

ひまわり学生運動が始まった当時、国民党では党内対立が深まっていた。政府は学生たちの要求だけでなく、若年層の失業・低賃金などの問題も抱えていた。これら問題の解決を要求する市民たちは、ひまわり学生運動を契機に、2013年の洪仲丘事件の時のように街に出てデモを行った。

政府・与党は街に出た市民を指して「民進党が扇動している」とアピールしたものの、かえって国民党に対する民心と支持基盤を失う結果となった。2014年11月に行われた全国地方選挙における国民党の壊滅的な敗北が、そのことを明確に示している。

国民党は、その後、さらに国民の反発を買う失態を引き起こす。2015年に馬英九政権は、事前協議なしで教育部(省)を通じて高等学校の歴史教科書の編集綱領を修正することを決定。植民地時代における日本の役割と功績などの内容を薄める一方、国民党の経済実績を強調するなど、いわゆる「大中国史観」を推進した。

これに対し学生たちは抗議運動を展開、高校生が抗議のあまり自殺する事態も起きた。それでも政府は、学生たちの修正撤回要求に応じなかった。

国民党の相次ぐ失策で政治への関心高まる

失策により国民党の支持率が低下する一方で、民進党主席で今回の総統選に立候補している蔡英文氏の人気は上昇していった。

それに対し、国民党は総統選候補者に指名されていた立法院副院長の洪秀柱氏を「(親中的な)問題発言が多い」として突然交替。同党主席で新北市長の朱立倫氏を擁立して人気回復に努めたが、思うような効果は出なかった。世論調査などを見ても、総統選における民進党勝利は固い。

立法院でも激変が起こる可能性がある。今回の選挙では、民進党が史上初めて立法院議席数の過半数を得る可能性がある。そして、「新政治」を訴えて設立された「第3勢力」と呼ばれる政党も議席を得る可能性が高い。

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