学生運動が起点、いま台湾は激変前夜にある 「第3勢力」が与える影響力は大きい

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政治に対する市民の関心が高まり、直接参加するようになる中で、政治方法や主張の多様化を求める声も高まった。このような声を背景に、国民党・民進党の二大政党だけでは国民の要求をくみ取れない声をすくう新党の設立気運が形成。それが現在、「第3勢力」と呼ばれる政党であり、これら政党はひまわり学生運動を契機に産まれた政党を指す。

代表格は「時代力量」。ほかにも緑党と社会民主党がタッグを組んだ「緑党社会民主党連盟」、既存政党で現在立法院に3議席を持ち、台湾独立を主張する台湾団結聯盟なども引き続き候補者を出して選挙戦を戦っている。

新興政党が第3極を形成、一大勢力に

「時代力量」から台北市5区に立候補したフレディ・リム(林昶佐)は人気メタルバンドで活躍するミュージシャンだ(写真: REUTERS/Pichi Chuang)

第3勢力の中でも特に支持が拡大しているのは、憲政民主と社会の公平・正義を訴えてきた政党「時代力量」だ。創設メンバーの中には、台湾を代表するロックバンド「閃霊」(ChthoniC)のボーカル・林昶佐(Freddy)氏がいる。

今回の選挙では台北市内で無料コンサートを開催し、「独裁政権打破」を叫んで注目を集めている。ただ、この注目度がそのまま得票につながるかは予断を許さない状況だ。

2012年の親中メディアの独占・寡占に反対する運動に参加し、ひまわり学生運動の時には学生たちのブレーン役を務めた元中央研究所研究員の黄国昌氏が時代力量の主席となり、台湾北部・新北市の選挙区から立法院選挙に立候補している。

故・洪仲丘氏の姉である洪慈庸氏も、故郷である台中市の選挙区で時代力量から立候補した。彼女は弟に関する事件の真相究明運動を行う中でテレビなどメディアでの露出が多かったこともあり、その姿を見て芯の強い女性という肯定的な評価と好感をもたれている。洪慈庸陣営の関係者は、「対立する国民党の楊瓊瓔候補の勢力が強く、われわれはまたく安心できない。引き続き総力を傾けて遊説している」と打ち明ける。

伝統的に、台湾の選挙では総統候補が「母雞帯小雞」(母鶏がひよこを連れて歩く)の役割する。すなわち、知名度が高い総統候補が各地域まで周り、立法委員候補を応援し、ともに遊説に回るということだ。国民党は2014年の地方選挙で惨敗し、優勢だった地方における支持基盤が弱体化した。

馬英九政権の8年に対する評価が相対的に低いため、国民党の候補者の負担は重くなっている。支持率で蔡英文候補とは大差をつけられている朱立倫候補は、かつて「スーパースター」と呼ばれていた馬英九総統が行ったような「母雞帯小雞」の役割を果たせずにいる。

一方、2014年の地方選挙での勝利したことで、民進党の地方における動員力がはるかに強まっている。たとえば台湾第2の都市である高雄市の陳菊市長、台南市の賴清徳市長、台中市の林佳龍市長など好感度が高い民進党のスターらが、今回の選挙でもサポート役として十分な役割を果たしている。

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