【産業天気図・パルプ・紙】原燃料高で収益苦戦で08年度も「曇り」、値上げ次第で若干回復も

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製品価格の値上げにより一息つくかに見えた製紙業界だが、状況はさほど変わらず、2008年度も「曇り」模様だ。というのも、原燃料高が止まらず、07年中に数回にわたって実施された値上げも効果が薄れているからだ。本来であれば08年の年明けから春以降の値上げについての交渉のテーブルに着くはずであったが、再生紙の不当表示問題の浮上によって、時期が遅れ、4月からの値上げは頓挫。早くて夏頃にズレ込む見通しになっている。
 原油高は単にボイラーの燃料というだけではない。むしろ、この点に関しては王子製紙<3861>、日本製紙グループ<3893>をはじめとして、バイオマスやLNGなどへのエネルギー転換の効果が新年度からフルに効いてくる。だが、表面処理剤、紙力増強剤などの製紙用薬品の大半はナフサを原料としており、原油高が直接響く。国内の製紙用薬品メーカーは3社しかないうえ、製紙機械一台ごとに細かく薬品を調製しなくてはならないため、たやすく他社に乗り換えるわけにはいかない。またガソリン価格上昇が輸送コストにも跳ね返る。さらに大きな問題は、古紙価格、木材チップの高騰だ。2007年末から20~40%も上昇しており、通期で10~15%程度の値上げや多少の円高の追い風があったとしても、とうてい追いつかない。
 需要は堅調だ。再生紙の古紙利用率に関する不当表示問題はあっても、業界全体に広がる問題であり国内の供給力からすれば直近での問題がないとされる王子製紙1社が全部を肩代わりするわけに行かないし、まして、出自の明らかでない輸入紙などへの切り替えはグリーン購入法の精神からしても、古紙利用率向上の観点から見ても本末転倒となるためだ。
 王子、日本、大王製紙<3880>等大手は現在28年ぶりとなる新聞用紙の値上げに取り組んでいるが、巨大ユーザーであり各社とも出荷停止などの強硬手段はとれない。「地道に理解を求めていくしかない」と各社は口をそろえる。他の紙製品はすでに値上げが実施あるいは時期が決定しており、最後で最大の難関といえる新聞用紙の値上げが通れば、少しは収益的に明るい材料となる。
【小長 洋子記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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