日本企業が強いリーダーを育てられない理由 納得する人選と育成プロセスを確立せよ
その際に忘れてはいけないことがあります。チャレンジする候補者たちに思いをかけて、ストレッチを後押しするメンタリングです。メンターとは、師であり親の役割です。普通の「上司」という存在を超えた、厳しくも温かい、緊張するけど話したくなる、という存在です。そもそも誰かに思いをかけてもらい、育ててもらった経験をもち、それに感謝している人は、自分も部下を育てます。逆に、思いをかけられることなく、育ててもらったという実感をもたない人は、人を育てることに情熱をもつことはできないはずです。ストレッチゴールとメンタリングはつねにセットです。
経営リーダーは就任後の100日間が勝負
実際にリーダー候補者を重要ポストにストレッチアサインをし、「はい上がった者だけを選ぶ」という方法もありますが、それではスピードが落ちてしまいかねません。
特に経営リーダーのポジションにおいては、就任後最初の100日間が勝負です。この期間に現状の到達度合いとポテンシャルを見極め、変革のシナリオを創らなければなりません。就任後100日以内に、メンバーをインスパイアできるかどうかが、その後の成長軌道を決めてしまいかねません。つまりメンタリングは何よりもタイミングをとらえて行うことが大切です。
もし、現リーダーがメンターを行いたくてもタイミングが合わない場合には、外部のメンター役をつけるのも一案です。しかしいわゆるコーチと混同してはいけません。メンターは、多様な経験と経営的な視点から、判断の良し悪しを指摘したり、具体的なアドバイスができたりしなければ務まらないからです。つまり、本人が直面している課題に対して圧倒的に豊富な経験値をもった人材を起用することが重要なのです。
リーダー自身がリーダー候補者に直接語りかけ、自分の価値観や展望についてオープンにじっくりと話す。そんな場を最もつくりやすいのがリーダーによる「私塾」だと思います
たとえば、トヨタ自動車は、課長級社員を対象に社長や副社長などの秘書役として4カ月間登用する「トップ密着型」研修を2014年に始めました。トヨタほどの大企業のトップが、ミドル社員にマンツーマンでOJTをするのです。またあるメーカーでは、経営トップがビジネススクールのケースを私塾の教材に活用しています。具体的には、自分も塾生も同じケースを解き、「いま何を意思決定すべきなのか」「どう意思決定するか」「それはなぜか」という議論を繰り返すことで、塾生にリーダーとしての判断軸を刷り込もうとしているのです。
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