日本の「動画配信」は、どこまで伸びるのか Netflix上陸、迎え撃つdTVなど百花繚乱

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そして、これらの変化を背景に、すべてを変えるきっかけになったのが「スマートフォン」の普及だ。スマートフォンは画面も広く、パソコンと大差ない処理能力を使える。しかも、通信機能は内蔵しており、家庭にインターネット回線があるか否かを問う必要も、難しい接続もない。

いまや、スマートフォンで最も多くパケット通信を使っているのは、ハイテクマニアではなく、ごく普通の10代の若者たちだ。音楽を、ユーチューブやニコニコ動画を経由し、無料で楽しんでいるからだ。

彼らにとって、コミュニケーションもエンタテインメントも、入り口はスマートフォン。1990年代までに生まれた人々が、ごく自然に「テレビ放送」を入り口として選んできたこととは、大きく異なる。家に帰り、暇な時に最初に持つものは、もはやテレビのリモコンではなくスマートフォンである。

テレビの視聴率が下がり、視聴者そのものの高齢化も進み、CMが価値を生みづらくなっている現状では、映像コンテンツの露出を「放送」だけに頼るのではなく、広告ベースや有料によるネット配信に期待するのも当然といえる。

15年10月には、在京キー5局が共同で「TVer」という見逃し配信ポータルを開設したが、その狙いも、ポータルに人を集めること以上に、広告ベースでの配信の基盤を確立し、テレビ局としての収益源にすることが狙いだった。

「下町ロケット」がTVerの追い風に

事実、スタート直後から、TVerは好調と伝えられている。スタートから3週間が経過した11月19日、アプリのダウンロード数が累計100万件を突破している。同時期にTBS系で放送されたドラマ「下町ロケット」の大ヒットにより、見逃し視聴需要が高まったことも追い風であったようだ。

TVerは順調な立ち上がりをみせている

同番組の視聴者は比較的年齢が高く、TVerの狙う「若者の掘り起こしにはつながっていない」との指摘もあるのだが、とにかく、「スマホからテレビ番組へのパス」が明確になってきた点は評価すべきだし、今後につながる動きと考えたい。

話はここで、SVODに戻る。dTVやHuluの利用者が増えたのは、スマートフォンの存在が大きい。スマートフォンから簡単に契約して視聴できて、さらに、時にはテレビでも楽しめる、とわかったからだ。

パソコンというピースが無視されてきたことによる不利が、ようやく埋まった結果、日本でもSVODが立ち上がり、コンテンツにお金が回り始めたのだ。今後は、収益の多角化のために、テレビ局からのコンテンツ提供がより加速することだろう。

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