日本の「動画配信」は、どこまで伸びるのか Netflix上陸、迎え撃つdTVなど百花繚乱

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映像を見るための機器として、テレビはいまだ最も優れた機器である。だが、ネットを使う機器としてはそうではない。技術が未熟だった2000年代ではなおさらだ。テレビでネットを見る際の動作速度は遅く、手順は面倒だった。文字入力など苦痛以外の何物でもない。

そのなかで、会員登録をし、作品を探し、クレジットカードの番号を入れて決済する、という手間を日常的にこなしてくれる人は、どのくらいいることだろうか? レンタルビデオ店に行って、DVDを借りてきたほうがよほど楽だ。

一方アメリカでは、そうした状況とは別の論理でビジネスが広がっていた。パソコンをベースとしていたためだ。日本と違いアメリカでは、家庭へのパソコン普及率が高い。しかも、日常的に活用されていた。著作権者の側も、「パソコンは違法コピーの温床だ」と無下に拒否することもなかった。

アップルやアマゾンがプラットフォーマーとして力をつけた結果、決済も彼らに任せれば簡単になった。それとは別に、ケーブルテレビ網でのスポーツを中心としたビデオオンデマンドは定着しており、「配信はディスクとは別の、もうひとつのビジネス」という認識ができていた。

だからこそ、Netflixのような事業者が出てきても、コンテンツ提供を必要以上に渋ることはなかった。もちろん提供価格や戦略の面で相容れない部分はあっても、単純にNGというわけではない。そして、パソコンからテレビへ広がり、いまやアメリカでもヨーロッパでも、Netflixをはじめとした映像配信が使えないテレビは売れない状況になっている。

アニメでの配信は先行して定着

ビデオオンデマンドがまったく振るわない、そんななか、日本でもじわじわと定着していったジャンルがある。アニメだ。

アニメについては、2つの側面で考える必要がある。

まず第一に、例外的に「テレビ視聴」がうまくいきつつあったということがある。08年にソニー・コンピュータエンタテインメントが同社のゲーム機「PlayStation」シリーズ向けに映像配信をスタートしており、アニメを中心に利用が広がっていた。ゲーム機は動作速度が速くて快適であり、決済方法もシンプルになるよう工夫されている。

そのため、アクトビラが陥ったジレンマとは無縁だった。ゲームとアニメという世界が近しく、利用者の親和性が高かったこともあったろう。ゆっくりとではあるが利用が増え、12年頃には、高画質な状態でいち早く見られることをウリに、ガンダムや宇宙戦艦ヤマトなどのドル箱シリーズの「プレミアム配信」では大きな利益を得られるようになっていた。

もうひとつが「テレビの見逃し配信」だ。一般的な番組と違い、深夜に放送されるアニメは、番組そのものがコンテンツであり、キャラクターや映像、関連商品を売るためのCMでもある。だから、見られる人を増やすほうがビジネス上の利益を最大化しやすい。

テレビ東京や独立局、深夜帯に放送されるアニメは、放送されない地域も多いし、録画しないと見づらい。そこで顧客を逃さないためには、ネットでの「見逃し配信」を積極的に行うことが重要だったのだ。そのプラットフォームとしては、ニコニコ動画やユーチューブが選ばれたが、理由は単純で、それが、アニメ視聴者がパソコンの上で見るのに最も適したサービスであったからだ。見逃し配信を行わないと、放送からの違法コピーによる配信が増え続けてしまう、という問題もあった。

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