小さな子どもはよく、公園で遊んでいるときに、親に対して「見ててね!」と視線を要求します。子どもにとって、見られている、ケアされている、注意を払われているというのは、なによりのご褒美。相手の目の中に自分が存在していることを感じられれば、それだけでモチベーションを高めるのです。
彼ら・彼女たちは、「ほめてね」「叱ってね」「アドバイスしてね」とは言いません。ただ単に「見てる」ことを要求するのです。こちらが見てさえいれば、自分で勝手に試行錯誤を重ね、いつまでも飽きずに努力を続け、結果的にパフォーマンスを上げる。それが子どもの才能であり、人間の本質というものです。
大人であっても、本質は同じ
逆に言うと、オトナ側=指導する側は、見てさえいればいいわけです。あれこれ言う必要はなく、真剣に見ていればいいのです。きちんと見る。「見ている」ということを伝える。このことが、相手にとってどれだけエネルギーを与えるか。
具体的には、見たことそのままを声がけするというテクニックが有効です。赤ちゃんに対して母親たちがどういうコミュニケーションをしているかというと、「立った!」「笑った!」「食べた!」と、行動をそのまま伝えていることが多いのです。凝った言い回しは不要で、それだけで十分、相手には「見ている」ことが伝わるというわけ。
さて、これらの考え方をビジネスに応用するなら、上司は部下を「見て」さえいればいいと言えるでしょう。
日々の仕事ぶりをウォッチし、業務日誌に目を通し、いつも気にかける。ときおり「例のプレゼンすごかったらしいね」「あのアイデア、よかったよ」などと、声をかける。あなたにはいつも注意を払っていますよ、というアピールによって、部下はモチベーションを高めるのです。
巷では「ほめる技術」「叱り方」など、部下のやる気を引き出すためのテクニックが多く語られています。しかしそれらも、きちんと見ていることがベースになります。ろくに見てもいないのに「すごかった」「あれはよくない」などと言おうものなら、かえってモチベーションを下げてしまうことに。それでは「仕事にかまけて子どもの日常について知らないのに、たまに早く帰宅しては説教をして疎まれる父親」と変わりません。
冒頭のドラマの例でも娘は、仕事ばかりで自分のことを見ていない(ように思える)父に対して不満をため込んでいました。涙ながらに「見ててね」と言われた父は、はっと胸を打たれ「当たり前じゃないか!」と叫んでいました。
ねえ、私のこと見てる? ちゃんと見ててね! 目を離さないでね!
そんな、幼児のような、声にならない部下からのアピールを上司としては早めにすくい上げたいものです。手遅れにならないうちに。
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