112.5%増--2012年上期の円高関連倒産の増加率《気になる数字》

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 倒産件数全体が減少しつつある中、円高によって倒産に至る企業は増加している。帝国データバンクの「第6回円高関連倒産の動向調査」によると、2012年1~6月の円高関連倒産件数(負債総額1000万円以上、法的整理のみ)は51件で、前年同期24件の112.5%増だった。

原因別に見ると、海外からの「受注減少」が17件(構成比33.3%)、「輸出不振」が6件(同11.8%)と円高による価格競争力低下が打撃となっている。

それと並ぶのが「デリバティブ損失」による倒産の16件(同31.4%)。ヘッジニーズがないにもかかわらず為替デリバティブを購入、運用に失敗したケースが多い。金融庁によると、10年9月末時点で残存する中小企業向け為替デリバティブ取引契約は07年度までに販売されたものが8割を占める。リーマンショック直前(08年8月末)の水準から現在まで、円は対ドルで最大約33円、対ユーロで約65円も円高が進行。デリバティブ損失が大きく膨らんだ。

商品説明が不十分との苦情も多い。金融機関との紛争事例に関しては、短期解決を目指す金融ADR(裁判外紛争解決制度)が設けられているが、交渉に時間がかかり、その間資金繰りに行き詰まった事例もあった。まだ続く史上最高値水準の円高が、中小企業の倒産動向に今後も影響を与えることが懸念される。

(データ事業局「気になる数字」調査班 =週刊東洋経済2012年8月25日特大号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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