東洋経済CSRデータの詳細分析で判明!「女性が活躍する企業」はここが違う《第4回・最終回》 女性管理職の活躍で生産性は上昇、収益性も高まる
日興フィナンシャル・インテリジェンス株式会社
最終回となる今回は、「企業の収益性」について分析する。女性従業員の活躍と企業の収益性の関係について、最近の研究によれば、女性従業員が活躍する企業の収益性は高いことが明らかとなっている。ここでは2つの研究を紹介する。
ハーバード・ビジネス・スクールのSiegel准教授と経済産業研究所の児玉氏は、2001年から06年までのわが国の企業データを用いて分析を行い、製造業において役員や管理職などの女性役職者が在籍する企業の収益性が高いことを明らかにした*1。
彼らは、収益性が高まる理由について、2つの要因を挙げている。ひとつは女性役職者の人件費が低いことであり、もうひとつは女性役職者のリーダーシップによる生産性の上昇である。女性役職者の人件費が低いことの背景には、労働市場において女性に対する差別意識(たとえば、「女性は家庭を優先するから辞めてしまう」という意識)を持つ企業が多いことが指摘されている。
このような状況では、男性役職者と同等の能力を持つ女性役職者の人件費は、労働市場の需要と供給の関係により、相対的に低くなる。結果として、差別意識を持たない企業は、女性役職者を雇用することで人件費が低く抑えられ、収益性を高めることができる。
これに対して、女性役職者のリーダーシップによる生産性の上昇とは、文字通り女性役職者が活躍することで、収益性が高まることを意味する。
これに関連して、慶応義塾大学の山本准教授と松浦氏が行った研究によれば、ワーク・ライフ・バランス施策に取り組む企業では、一定の条件下において*2、中長期的な生産性が上昇することが明らかとなっている*3。彼らは、「ワーク・ライフ・バランス推進組織の設置」「長時間労働を是正する組織的な取り組み」「非正社員から正社員への転換制度」などのワーク・ライフ・バランス施策が、生産性の上昇に有効であると述べている。
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*2 具体的には、従業員300人以上、製造業、労働の固定費が大きい、均等施策をとっていることのいずれかを満たす企業である。
*3 山本勲・松浦寿幸(2011) 「ワーク・ライフ・バランス施策は企業の生産性を高めるか?-企業パネルデータを用いたWLB施策とTFPの検証-」RIETI Discussion Paper Series 11-J-032.