地球上の水は循環し決してなくならない--『水危機 ほんとうの話』を書いた沖 大幹氏(水文学者、東京大学生産技術研究所教授)に聞く
巷間にあふれる水に関する誤解や思い込みを、「水文学(すいもんがく)」の立場から正すという。これだけは知っておきたい“水に流せない話”とは。
──「水文学」の研究者とあります。
水にまつわる森羅万象を研究対象としている。天文学が「天(宇宙)」のすべてに関する学問であり、人文学が「人」に関するすべてを扱うのと同様だ。それだけ、水に絡むことには何事でも関心がある。
──水ブームです。
世界で水需要が増え、水ビジネスも伸びている。水ブームは仕掛けられたところがある。それがうまくいって、世界的に盛り上がっている。水道水とPETボトルの水を同じ量で比べると、約1000倍の価格差があるが、共に成り立っている。
──海洋深層水も売り物になっています。
海洋深層水を真水だと思っている人は多いのではないか。塩水の深層水を脱塩すると、せっかくのミネラルも全部なくなってしまう。後で足したりしているが、それではコストが高くなる。今はほとんどの場合、塩水のままちょっとだけ入れる。発泡酒などに味付け程度として。
──地球上の水の97・5%は海水だと習いました。
それは、約97・5%は塩水だというなら正しい。その塩水の計算は、海洋下にたまっている地下水、それに塩水湖の水を加えたもの。