家計・企業の金融行動と日本経済 ミクロの構造変化とマクロへの波及 祝迫得夫著 ~資金・信用の需給変化を効率性、合理性から分析

家計・企業の金融行動と日本経済 ミクロの構造変化とマクロへの波及 祝迫得夫著 ~資金・信用の需給変化を効率性、合理性から分析

評者 河野龍太郎 BNPパリバ証券経済調査本部長

 人々は若い時に稼いだ所得の一部を貯蓄し、引退後に取崩して生活費に充てる。ライフサイクル仮説に基づき、多くの専門家は高齢化の進展で家計貯蓄率の低下が続くと予想した。大方の予想通り、家計貯蓄率はゼロ近傍まで低下したが、それを補う形で企業の貯蓄が増え、民間全体の貯蓄率は1990年代以降ほとんど変化していない。財政赤字は民間貯蓄で何とかファイナンスされ、今のところ長期金利の上昇も回避されている。

本書は、貯蓄投資バランスを分析したものだが、マクロ経済学の視点だけでなく、ファイナンス理論の視点も加わり、興味深い研究結果が示されている。

まず、家計と企業の貯蓄代替は、90年代末以降、企業が雇用リストラを続け、家計から企業への所得シフトが生じたことで助長された。高齢化以外にも家計貯蓄率の低下をもたらす大きな要因があったのである。このことは、労働所得に依存する家計と、株主として財産所得の割合が多い家計とで、異なる影響が生じていることを意味する。

設備投資の抑制も加わり、手元資金の増加した企業は負債の圧縮を進めた。90年代末の負債圧縮に限っていえば金融機関の貸し渋りが影響したが、それ以降は企業のイニシアティブで返済が進んでいる。ゼロ金利政策の長期化は、企業の資金調達コスト引き下げによる設備投資の刺激を企図したものだが、果たして十分な効果は得られているのか。借り入れを増やしているのは、むしろ内容の悪い企業である。金融政策のあり方を再検討する際の材料になろう。

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