家計・企業の金融行動と日本経済 ミクロの構造変化とマクロへの波及 祝迫得夫著 ~資金・信用の需給変化を効率性、合理性から分析

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次に、企業と家計の貯蓄を、金融部門はどのように運用しているのか。高齢化による支払いの増加に対応し、年金や生命保険はリスク資産から安全資産に資金シフトしているが、中でも超長期の国債の比率を高めた。公的債務の膨張にもかかわらず長期金利の低位安定が続き、一方でリスク資産の価格が低迷しているのは、こうした金融仲介の動きが背景にあるのだろう。

世界に目を向けると、90年代以降、金融危機が繰り返されている。レバレッジを膨張させシステミックリスク増大の原因となったインベストメントバンクが事実上消失し、同様の危機が近い将来繰り返される可能性は小さいという。ただ、民間のさまざまな損失は政府債務に付け替えられたままである。南欧で見られた財政を原因とする金融危機が日本に転移しないか、評者は懸念を払拭することができない。成長を確実に高める政策が存在しない以上、本書が論じるように、生産性向上のための努力を行うだけでなく、低成長に対応した社会保障制度や財政制度の構築が不可欠であろう。

いわいさこ・とくお
一橋大学経済研究所教授。1966年生まれ。一橋大学経済学部卒業、米ハーバード大学大学院博士課程修了(Ph.D.取得)。筑波大学社会工学系講師、一橋大学経済研究所講師・准教授、財務総合政策研究所総括主任研究官、東京大学准教授などを経る。

日本経済新聞出版社 4620円 248ページ

  

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