ユーロ危機とエリザベス英国女王の即位60周年祝賀行事には何も共通点がないように見える。しかし、実際には双方を考え合わせることで重要な教訓が見えてくる。それは、前向きなナラティブ(物語)が持つ力であり、それなくして勝利は不可能だということだ。
歴史家のサイモン・シャーマは祝賀行事について、「平凡な政治家たちの狭量さや醜さを乗り越える形で、英王室が同国の過去と未来をつなぐのに役立っている」と指摘した。国王や女王を持つ伝統は1000年以上もさかのぼる。王冠と馬車によるシンボリズムが持続し、かつてはイングランド人そして今は英国人の国家が体現されることで、英国人たちは結び付けられている。
これはパンと見世物というお決まりのやり方だと皮肉る向きもあるかもしれない。だが、ポイントは、国民の気をそらすためというよりも、気持ちを高揚させるために、人々の目と心を希望とナラティブに引き付けることにある。
特に今、過去と将来をつなぐ方法を欲しているのがギリシャだ。世界最初の民主主義揺籃の地として、ギリシャは笏(しゃく)や式服以外の国家再生のシンボルを必要としている。
外交、貿易、結婚、オイル、ワイン、長い船などを通して島々や海岸や人々が織り成す地中海世界を、多くの西洋の読者が知ったのは、ホメロスを通してだった。ギリシャは、現在の危機を利用して新たな将来を創造し、そうした世界の支柱の一つに返り咲けるかもしれない。
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