地中海東部の天然ガス田は、最大122兆立方フィート(世界全体の1年間の供給量に相当)を埋蔵していると推定される。さらに、エーゲ海とイオニア海のギリシャ沿岸沖には、ガス田と大規模な油田が横たわっている。イスラエルとキプロスは共同の石油探査を計画し、イスラエルとギリシャはパイプラインについて協議し、トルコとレバノンは探査を行い、エジプトは探査に対する認可を与えることを計画している。
ただ、これらの国々は海事の紛争や政治的な意見不一致を抱えている。トルコは、同国だけが承認している北キプロスと協力し、イスラエルがギリシャ系のキプロス共和国政府と協力して掘削することに対して、威嚇的な発言を繰り返している。ギリシャ系のキプロス人は、トルコとのいかなる折衝においてもEUの加盟問題を人質にしている。トルコは、キプロスの船舶を自国に入港させないし、イスラエルとは協議が行える関係にない。またレバノンとイスラエルには外交関係がない。
要するに、責任あるエネルギー開発を行えば、この地域のすべての国々に流れ込むはずの富、雇用、発展が、各国のかたくなな姿勢によって、閉ざされているのだ。
第2次世界大戦後の歴史から学べること
地中海エネルギー共同体というビジョンは、空想にとどまることを運命づけられているようにも思える。だが、7月には、第2次世界大戦終結からわずか6年でフランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの間に欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)を設立させたパリ条約の批准60周年を迎える。それ以前の70年間において、ドイツとフランスは三つの壊滅的な戦争で互いに戦い、多くの命を奪った。
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