出世したいなら捨てるべき「4つの美徳」 「上に行けない」人は大体勘違いしている

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ここで似て非なる2つの言葉「権威と権力」について考えてみます。

権威と権力のどちらを目指すべきか?

説明することが難しいと感じるかもしれませんが、一般的な定義は以下のようにまとめることができるでしょう。

「権威」=ある分野で抜きんでており信頼があるか、心理的に服従させる力
「権力」=他人に何かを強制することができ、物理的に服従させる力

 

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簡単に区別するなら、権威は心理的な効用であり、権力は物理的に相手に何かを強制できる力です。たとえば、政府の権威が失墜(信用を失う)しても、政府自体の権力は失墜しないわけです。世の中を見渡すと、人間を動かす力学はほぼ権威か権力の2つであることがわかります。人を動かすこの2つの力学を500年前に明確にしたのが『君主論』です。

『君主論』は、歴史上のほとんどの偉人が最初は権威をその身に集めて、次に権力にすり替える形で台頭したことを教えています。何かの問題解決の実績を挙げて信頼を得たり、周囲の人に心理的に頼られたりすることが権威の小さな出発点です。

紀元前3世紀にシラクサという国を支配したヒエロン2世は、都市を防衛する市民隊長に選ばれ、その後の功績で推挙されて王になりました。イタリアではマキアヴェリの時代、フェルモという街のある人物が、軍務に精通していたため、軍団の第一人者になりますが、しばらくのちに町の有力者を皆殺しにして、王の地位を手に入れてしまいます。

歴史上のこの2人の人物を見ると、最初に権威を身に集めて、次に強制力を他人に発揮できる権力に変えていったことがわかります。現代でも、ビジネス組織では出世のためにまず“一目置かれて”権威を得る必要があり、その権威の結果として肩書きを得ることで、周囲に命令するなどの強制力(権力)を段階的に手にすることになります。

唯一の例外は、二世後継者など地位(権力)を先に得てしまうパターンです。この場合、新社長という肩書(権力)は手にしますが、トップに相応しい権威(心理的な信頼関係)がない場合は優秀な社員が辞めてしまうなどのトラブルも起こります。新社長は信頼や頼りがいなど、自らに欠けているものを急いで補う必要を『君主論』も強く指摘しています。

しかし世の中の出世のほとんどは「①権威を得る→②権力を手にする」のパターンであり、思うほど出世できない残念な人はこの“権威を得る”という出世の第一段階を知らず、無視して努力をする共通点があるのです。

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