出世したいなら捨てるべき「4つの美徳」 「上に行けない」人は大体勘違いしている

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出世において上役にゴマをする、媚を売るなどの“技術”はどうなのでしょうか。『君主論』は不思議なほど、相手にゴマをすることに触れていません。理由は恐らく、上司に媚を売ることで引き上げてもらうと、相手に首根っこをつかまれたような状態になってしまうからでしょう。

ゴマをする者は、相手から軽んじられてしまいます。それは不安定な状態です。一方で『君主論』は、相手の困りごとをチャンスにする、別の勢力も味方につける、一人の上司に引き上げられたときは実力を大急ぎで身に付けることを説いています。

さんざん媚を売った相手が出世街道から脱落すれば、ほかに手を打っていない場合は一緒に脱落する以外に道がありません。『君主論』は支配力を固めながら出世するための書であり、心もとない立場に陥ることを避けているのです。

仕事と関係ない社内政治で振り回されないために

名著『君主論』におけるマキアヴェリの主張と提言は、人を動かしている権威や権力について「勘違いした人間になるな!」ということです。権力の構造は、知らなければ一生気づかないで終わってしまう種類の知識です。多くの人は普段から目の前の仕事に忙しく、権力や出世についてあまり考えません。結果、出世の道はどんどんと遠ざかってしまうのです。

なんらかの地位を得るために、社内政治が大切だとは誰もが知っています。しかしその「社内政治」が、どんな力学で動くのか見抜いていなければ正しい振る舞いは不可能です。すでに述べてきたように、出世の第一段階で身に付けるべき権威は、目の前の上司にひたすら媚を売るだけで手に入るものではないのです。

最後に『君主論』の重要な指摘をお伝えしてきます。権威も権力も、執着心がある人間ほど手にすることです。これはお金にどん欲な人がお金に恵まれることと同じです。そして、すでに地位を手にしている人は当然ながら権力への執着心が人一倍強い種類の人たちです。このような人と、正面から激突するのは得策ではありません。

庶民は恨みを忘れがちですが、権力者は正反対なのです。そのため、上位者と本気で衝突したときは、その組織から飛び出して、新たな環境で出世を目指すことも選択肢に入れるべきなのです。

鈴木 博毅 ビジネス戦略、組織論、マーケティングコンサルタント

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すずき ひろき / Hiroki Suzuki

1972年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。貿易商社にてカナダ・オーストラリアの資源輸入業務に従事。その後国内コンサルティング会社に勤務し、2001年に独立。戦略論や企業史を分析し、新たなイノベーションのヒントを探ることをライフワークとしている。『「超」入門 失敗の本質』(以上、ダイヤモンド社)、『実践版 孫子の兵法』(プレジデント社)、『3000年の叡智を学べる 戦略図鑑』(かんき出版)など著書多数。

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