最高裁回想録 学者判事の七年半 藤田宙靖著 ~国民と共有する国会の一票の較差放置への怒り
この怒りは明らかに国民と共有されている。「投票価値の平等の要求」の無視は、もはや国会による犯罪とすら言えよう。
最高裁が年間に処理する事件は9000件あるという。1日に平均10件処理するにしても、中にはA4判で数百頁の資料もあり、「次々と送られてくる事件資料」を読み続けるので「席の冷める暇のない忙しさ」であるという。アメリカの連邦最高裁判所は年間せいぜい100件とのことなので、日本はたしかに激務である。
また学者と裁判官の違いを説明しながら、学者はわからなければ判断を先送りにできるが、裁判官は「速やかに」「軍配を挙げることこそが基本的課題」であると著者は言う。なるほどそれでもって時にはヘンな判決があるのか、と評者は納得した次第である。
調査官や書記官の作業の高度さや、無意味と思える名刺交換やご挨拶の多さ、パーティのことなど、サイドストーリーも楽しい。今の最高裁を知るのに格好の本である。
ふじた・ときやす
東北大学名誉教授。1940年東京都生まれ。東京大学法学部卒業。同学部助手、東北大学法学部助教授、同教授、同大学大学院法学研究科教授を経て、2002年東北大学名誉教授、最高裁判所判事。10年最高裁判事を定年退官。
有斐閣 3990円 424ページ
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