最高裁回想録 学者判事の七年半 藤田宙靖著 ~国民と共有する国会の一票の較差放置への怒り

最高裁回想録 学者判事の七年半 藤田宙靖著 ~国民と共有する国会の一票の較差放置への怒り

 

評者 中沢孝夫 福井県立大学地域経済研究所所長


 最高裁判所の元判事による、憲法判断を中心にした法理解、最高裁内部の事務手続きや人間関係などの日常の執務、さらに宮中行事、そして社宅や出張といった舞台裏が記された「回想録」である。むろん中心となるのは「判決」に絡む学者判事としての考え方である。

 

もとより裁判は「判決文」がすべてであり、それゆえかつては「判事は弁明せず」が“通説”であったと評者は思うが、近年は「説明責任を果たす」のほうが“有力説”になってきたようである。価値観は時代によって急速に、あるいは徐々に変化するが、最高裁の判断もまたそうであることが本書によってよくわかる。著者は「近時の最高裁判例の動向」について「我が国の社会・文化の状況、国民の法意識等々が変化するにつれ裁判官の『良識』にも変化が生じ」てきていることを指摘している。たとえば「一票の較差」(投票権の不平等)を長く放置している、国会(立法府)に対して著者は次のように「良識」を発揮している。

「(最高裁は)国会がこれを早急に是正する必要があるとのメッセージを発し続けている。にも拘らず問題の根本を理解し、然るべき行動を取らない国会の不作為に対して、いわば我慢に我慢を重ねている。Xデーが来るのは、恐らくは、選挙を無効としたときにもたらされる理論的実際的混乱につき、最高裁は一切の責任を負うことができず」「との判断に多数の裁判官が達したときであろう。そしてその日は、国会の現状がこのまま続く限り、さほど先のことではないかもしれない」

関連記事
トピックボードAD
  • グローバルアイ
  • 湯浅卓「トランプ政権の真実」
  • 井手隊長のラーメン見聞録
  • 競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
携帯料金は4割下がる?<br>「高い」の根拠を徹底検証

菅官房長官の「4割下げられる」発言の数値的根拠は正当か? やり玉に挙がるキャリア3社の携帯通信料金の解明に担当記者が挑む。結論は「高いとはいえないが、キャリアは儲けすぎ」。取られすぎと感じる人必読の渾身リポート。