また、インサイダー情報が漏れないなどの規律も重要だが、日本の市場では、この点でしばしば問題が起こる。こうした問題があるために、外国企業を引き付けられないのだ。
ただ、暗いニュースばかりではない。今年3月には、有力企業の三一重工が東証上場を検討中と報道された。これの実現は東証が世界的市場間競争で生き残れるか否かを確かめる試金石になると言われる。
以上で述べたことは、日米証券市場の実力の差を、如実に示している。
元手なしでも巨額の報酬を稼げる
中国企業は、世界的信頼をうるため、多額の費用を払ってNYSEに上場しようとする。それに対し、東京市場は、上場審査のゆるさを見透かされて、マネーゲームの場として利用されている。
大学でも、中国人留学生を引き寄せる魅力には、日米間で差がある。それは認めざるをえない。しかし、これほどの差ではない。これは「残酷」と言えるほどの差であり、泣きたくなるような格差である。
ここで注意すべきは、マクロ的に見れば、アメリカは経常収支赤字国=資本輸入国ということだ。つまり、NYSEで中国企業に投資される資金は、アメリカ人が貯蓄して貯めたものではない。元をたどれば、外国から投資されたものである。日本からの投資は、その中で重要な比重を占めている。だから、NYSEは他人の金の仲介をやっているだけだ。
それがアメリカの金融機関に巨額の収入をもたらす。どの程度の規模かを推測するため、先般のフェイスブック上場を見よう。IPO(株式新規公開)の際の手数料率は、通常は資金調達額の3~7%程度と言われるが、このケースでは1%に設定されていた。IPO規模は160億ドル程度となったので、約1億7600万ドルの手数料収入が発生したと考えられる。