ニューヨーク証券取引所には中国を代表する企業が多数上場しているが、日本の取引所には有力中国企業が上場していないと、前回述べた。こうなる大きな理由は、直接金融市場での活動をサポートする金融業務が、日本で発達していないことにある。これは、「投資銀行業務」と呼ばれるものだ。そこで、この分野の日米金融機関の現状がどうなっているかを見ておこう。
ゴールドマン・サックス(GS)は、アメリカの代表的な投資銀行と見なされている。同社の従業員は約3万2000人で、時価総額は475億ドル(約3・8兆円)である。
2011年12月期で、純収入が288億ドル(約2・3兆円)、税引き前利益が62億ドル(約5000億円)だ。セグメント別の内訳は表に示すとおりだ。
「投資銀行」部門とは、M&Aに関する助言、引き受け業務など。「機関投資家サービス」とは、債券、株式などのマーケットメイキング。「投資及び貸付」とは、投資と長期の貸付。「投資マネジメント」とは、投資信託や対富裕層サービスなどである。これらの多くは法人企業を対象として行われている。
投資銀行の伝統的な業務は、引き受け業務(アンダーライティング業務)である。社債で資金調達する場合の社債、あるいはIPO(株式新規公開)や公募増資の際の新株を、いかなる条件でどれだけの額発行するかを決める。いったんすべて引き受け、一般投資家に向けて販売する。売れ残れば、自分で抱え込まなければならない。これは高度な判断が必要だ。しかも、リスクを負うことになる。そのため、高額の報酬を得ることができるのだ。
GSは地域別の計数も公表している。アジアは、純収入では288億ドルのうち39億ドル、税引き前利益では62億ドルのうち3億ドルだ。このように、利益におけるアジアの比率は低い。