なお、日本では野村ホールディングスのほかに、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループなどが投資銀行業務を行っているとされる。
資金をどの分野に振り向けるかは、一国経済にとって大変重要な意味を持つ。計画経済では、官僚制度が資金割り当てを決定する。市場経済では民間の金融セクターがその役割を果たすが、間接金融(銀行融資を中心とするシステム)では、大銀行の力が強く、官僚的な大組織が決定を行うことになる。それに対して直接金融(株式市場や債券市場から資金調達するシステム)の場合には、市場が資金の配分を決める。
計画経済の硬直的な資金配分がもたらしたものが、社会主義経済の非能率性であった。間接金融の場合、経済環境が大きく変化しても、資金配分を転換できず、その結果、古い産業構造が残ってしまうという問題がある。1980年代後半からの日本の問題の根本はここにある。しかし、そうした認識は、ほとんど持たれていない。
間接金融中心の日本で投資銀行は伸びず
日本では昔から、証券会社の仕事は株取引の仲介だと考えられてきた。そして、株売買の執拗な勧誘、過度の回転売買による手数料稼ぎ、特定顧客への利益補償、相場操縦などの負のイメージが付きまとってきた。「金融は実態のない投機活動。あぶく銭を稼ぐのが目的」と考えている人が多い。
こうなったのは、日本の産業資金供給において、銀行融資の間接金融が中心で、株式や債券などの資本市場から直接に資金調達する直接金融が端役でしかなかったからである。