なお、GSのほかにシティグループ、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレー、メリルリンチ、UBS、ドイチェバンクなどが、代表的な投資銀行と考えられている。
日本の証券会社収入は投信手数料が中心
GSと比較するために、野村証券を中核とする野村ホールディングスを見よう。従業員は約3万5000人(連結)で、時価総額は1・07兆円だ。12年3月期において、収益が1・53兆円、税引き前利益(経常利益)が850億円だ。GSと比べると、従業員数はほぼ同じだが、利益は約17%でしかない。
セグメント別に見ると、1ページ目の表に示すとおりである。ここでの「営業」部門とは、投資信託、債券などの販売。「アセットマネジメント部門」は投資信託ビジネスや投資顧問ビジネスだ。投資銀行業務は「ホールセール」に含まれる。この部門の収益は5559億円と大きいのだが、税引き前利益はマイナス376億円だ。利益のほとんどは、営業部門から生じている。
手数料収入で見ても、ホールセールの比重の低さが分かる。12年3月期において、株式委託手数料が360億円、投資信託募集手数料が1399億円、販売報酬が590億円、投資信託残高報酬等が474億円であるのに対して、投資銀行業務手数料は382億円にすぎない。このように、GSと野村の利益構造は、かなり異なる。
日本では、「引き受け業務は野村証券の独り勝ち」と言われているが、それでも証券業務全般の中での位置づけはこの程度のものなのだ。
野村の場合に大きな比重を占めるのは、多数の営業マンを使って行う個人向けの業務だ。これらは、格別の専門的知識を必要としないサービスである。そうしたサービスの報酬が高くなるはずはない。1人当たり利益に大きな差が生じる基本的な原因はここにある。