おしゃれな「寺カフェ」は布教の新スタイルだ

現代人を救う「南無阿弥陀仏」の目的と効用

「寺カフェを始めるにあたり物件を探すのですが、貸し手を見つけるのが本当に大変でした。ようやく貸してくださる物件を見つけたのは、探し始めてから1年後。その物件は、以前のお店の名前が『ガゼーボ』だったんです。何十年も前の記憶が蘇りまして、これはGOサインだな、と確信しました。そういう偶然は何度も起きています」

こうして、駒沢通りに仏旗はためく異色のカフェが登場した。しかし、“そういう偶然”はなぜ起きるのか。淺野氏は次のように話す。

「浄土真宗では、南無阿弥陀仏のお念仏を唱えます。これは、家内安全や病気平癒、立身出世などのご利益を求めるものではなく、『心を安定させること』を目的としています。お念仏を唱えることは、教えを理解するためではありません。自分が信じようと信じまいと関係ない。お釈迦さまのほうが、心が安定するように導いてくれるのです。つまり、迷いなく心が平和でいられるようになり、頭がスッキリと冴えてくる。すると自然に道が開けてきます」

仏教は「安心立命(あんじんりつめい)」を目指す

南無阿弥陀仏が魔法の言葉のようにも聞こえるが、淺野氏が“お釈迦さまに守られた”というエピソードがもうひとつある。住職の父上が亡くなった時、100億円近い借金があることがわかった。売却できるものはすべて処分しても、完済には遠く及ばない。「お寺を閉めた方がいいのでは」というアドバイスもあったという。

淺野弘毅(あさの こうき) 1953年生まれ。浄土真宗本願寺派生田山信行寺第17代住職。寺カフェ代官山オーナー。著書に『下手な説法も数々説けば』がある

「でも、お墓を守らなきゃいけないでしょう。正直、どうしていいかわからなかった。ところが、メインバンクが倒産してバルクセールで借金がすべてなくなったんです。この時はさすがに、お釈迦さまが考えてくれたんだと思いました。もちろん、今でも迷うことも心配することも山ほどありますよ。でも、心が安定してさえいれば、いろんな偶然が起き、なんとかなる。どんなに辛いときでも心だけはお釈迦さまに任せておけば、なんとかなると思える。これがとても大事なことなんです」

いかなる場合でも心が安定し、煩悩もなく、悩まずに心を乱さないことを「安心立命」(あんじんりつめい)というそうだ。これが仏教の最終目標で、お釈迦さまが考え付いた、本当の安心を得られる完璧な方法。人間は、物欲や名誉欲などさまざまな欲望がある。でも、心の迷いがなくなることこそ、本当の幸せへの道なのだと言う。

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