マツダが目指す自動運転は人間を高みに導く 機械と人間はどうやって意思疎通できるのか

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稲垣:航空機のパイロットは、それまでと違う機種に乗り換える場合は、前の機体のことをすっかり忘れるくらい新しく乗務する機種について訓練しないといけません。ただ、訓練時間ももったいないですから、前の機体のインタフェースを思い描いたまま、新しい機種を操れるほうがいいに決まっています。その意味で、同じメーカーならば、車種が違ってもHMIのデザインが共通化できているほうがよいでしょう。

これまで自動車業界ではHMIはあまり重視されておらず、全体設計が済んだ後で余ったスペースを利用するケースが多かったようですが、今後はそうはいきません。HMIをおろそかにすると、まったく使えない自動運転車になり、万が一事故が起きた場合に「ドライバーに適切な情報が与えられていなかったことが原因」となれば、そのメーカーのダメージは計り知れません。

走る楽しさを大事にしたマツダのコンセプト

日々の運転を通して高みに。究極的な人間と機械の関係だと思える

清水:マツダは「人馬一体型自動運転」というコンセプトを打ち出しました。自動運転でも、走る楽しさを大切にするという意味です。車に乗る楽しさも考えると、HMIとは違った角度からも人間研究をする必要がありそうですね。

稲垣:レベル3は基本的に機械が運転し、人間は監視義務からも解放されますが、レベル2の場合と同様に、車を運転しているのは機械か人間か、いずれか一方です。しかし、人馬一体になると、人間も車を運転しているけれど、機械も車を運転しているという形態、つまり、車の運転の権限を人間と機械が共有している「シェアードコントロール」と呼ばれる状態が起こり得ます。

高速道路でカーブを曲がるとき、運転に不慣れなドライバーはステアリングを切るタイミングがよくわからず、速度を落としなら恐々と曲がっていきます。シェアードコントロール方式の自動運転車であれば、そういった場面では機械が最適な運転を披露しますので、ドライバーはステアリングに手を添えていることによってステアリングを切るタイミングなどを体感として学ぶことができます。その結果、それまでできなかったことが次第にできるようになりますから、ドライバーにとって、機械と一緒に運転することが楽しくなるのではないでしょうか。

清水:日々の運転を通して高みに行けるわけですね。それこそが究極的な人間と機械の関係だと思います。2020年までは議論を重ねて、自動運転がどのように進化していくかをウォッチし続けたいですね。

稲垣:2020年どころか、その先もいろいろな自動運転車が出てくるはずですが、ただ車を作ればいいということではありません。自動車メーカーの皆さんには、どういう考え方で、どういう自動運転車を作りたいと思っているのか、ぜひともフィロソフィーを熱く語っていただきたいと思っています。

――ありがとうございました。

清水 和夫 国際自動車ジャーナリスト

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しみず かずお / Kazuo Shimizu

1954年 東京生まれ 武蔵工業大学電子通信工学課卒業。1972年のラリーデビュー以来、プロドライバーとして、国内外の耐久レースで活躍する一方、モータージャーナリストとして活躍を始める。自動車の運動理論や安全性能を専門とするが、環境問題、都市交通問題についても精通している。日本放送出版協会『クルマ安全学のすすめ』『ITSの思想』『燃料電池とは何か』 ダイヤモンド社『ディーゼルこそが地球を救う』など多数。日本自動車ジャーリナスト協会 日本交通医学研究会 会員。日本科学技術ジャーナリスト会議 会員(JASTJ)。

http://www.startyourengines.net/

https://www.facebook.com/kazuoshimizuofficial/

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