「東京電力」研究 排除の系譜 斎藤貴男著 ~詳細に明らかにされる巨大企業の戦後史
評者 奥村 宏 会社学研究家
なぜ原発事故は起こったのか。東京電力とはいったいどういう会社なのか。
いま人々の関心が集まっているこの問題に対して、さまざまな資料をあさり、関係者の話を聞いて詳しく書かれている。
たとえば第一章の「安全神話のパラドックス」では1984年に書かれた原発テロ対策に関する外務省の内部資料を掘り起こして、原発がいかに危険であるかということが関係者には早くから認識されていたことを明らかにしている。
戦後まもなく9電力体制がスタートした時点にまで遡って、東電という会社の社内組織や労務管理のあり方、そして電産労組の動きなどについてもよく調べている。
東電という会社を代表している人物として木川田一隆と平岩外四という二人の元社長が挙げられるが、前者は経済同友会、後者は経団連のトップとして日本を代表する財界人でもあった。
二人とも「財界の良心派」のように見られたが、その虚像を壊し、二人がいかに巧妙にマスコミを操作したか、ということもこの本を読めばよくわかる。
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