渡邉美樹議員「ワタミには1000%戻らない」 赤字転落した古巣を想う創業者の胸中

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中間期の決算説明会で説明する清水邦晃・現社長。難しい舵取りを迫られる(撮影:梅谷秀司)

――清水邦晃・現社長の舵取りは安心して見ているのか。

全然安心して見ていない。つくづく思うが、会社って子供みたいなもの。子供は幸せになってほしいし、自分らしく生きてほしい。その代わり、子供にもし何かあったら、親は守ろうとする。子供が相談したければ、相談に乗る。それが親のあり方。だから自立させなきゃいけない。

立つ木に見るということ。何をしようが自由ではあるが、方針だけは与える。会社でいうと理念だ。こういうものをやりなさいと。目先のおカネに走ってはいけないとか、コツコツ事業をやるとか、「ありがとう」を集めるとか。これは親が子供に教えること。入社式に親も来る時代らしいけど、少なくとも僕は親バカではない。でも、崖があって落ちるのが分かっていたら、それは止めるよね。

――財務状況の悪化で介護事業売却に追い込まれた。

業績悪化が見え始めたとき、銀行の担当者が来て、「創業者としてどうするつもりですか」と尋ねてきた。僕は会社に戻る気はない、と断言したうえで、保有する株式を全部出すと提案。全部担保にでもして、好きに使ってくれと。そこで銀行も一度安心した。

だが、今回銀行が言ってきたのは事業うんぬんではなく、自己資本比率が一桁台なのを問題視していた。今期は介護事業の売却で、自己資本比率も30%近くまで戻り、売却益も入る。現経営陣から相談を受けたとき、売却しなければならないかもと思っていた。

売却は入居者の不安を取り除く面もある。老人ホームを回っているとき、ワタミの一連の報道を見ている入居者から「大丈夫?」って声をかけられた。不安を与えている状態は幸せじゃないと思った。財務が安定し、われわれの思いを引き継いでくれる企業があれば、譲渡するのもありだと考えた。

ブルーオーシャンが広がった

――財務改善の一方で、収益柱を手放すことになる。

一面でそれは言えると思う。ただワタミ全体のモデルが崩れるわけではない。僕の社長時代、ワタミの介護を入居者が選ぶ理由の8割が、食事だった。競合の老人ホームも知っているので、「ぜひワタミの食事を入れてください」という要請もたくさん受けた。が、それは他社との差別化要因を消すので、しなかった。今回の売却で(他社にも宅食を提供でき)、ものすごく大きな”ブルーオーシャン”が広がった。ビジネスチャンスは拡大したと思う。

外食では和民が苦戦する地域に新業態を入れる。外部のコンセプターを巻き込み、店作りするのも必要だ。「働くことでみんなを幸せにする」、との理念さえ変えなければ、和民の看板を代えてもいい。変えるべきものを変えて50年、100年企業になっていくと思う。成功体験にしがみついたら負けていく。

――介護売却以外に、他と一緒になる、あるいは全体を売ってしまうという、大きな転換も考えられるのか。

理念がまったく同じところがあればいい。理念が広がることが、一番大事なのだが、それはなかなか難しい。ただ、今までワタミは、全部自己解決でやってきた。ワタミモデルの枠組みの中で、様々なコラボレーションを組んでいくのは、絶対に必要だ。そのことについては何も遠慮する必要はないと思う。

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