渡邉美樹議員「ワタミには1000%戻らない」 赤字転落した古巣を想う創業者の胸中
――何でも手頃に提供される、総合居酒屋の存在意義が薄れてきたということか?
(総合居酒屋の)マーケットがなくなるわけではない。何でもおいしいし、何でもそこそこの値段で安心、というニーズはある。そのマーケットが縮んだだけだと思う。全体的に居酒屋市場が縮んでいるので、専門化が進むというのは当たり前、といった流れが起きている。それを見誤ったのが最大の問題と思う。
早い段階で新業態に力を入れろ、という声も聞くが、非常に難しい。一方では15%の利益が出て、一方では5%の利益しか出ない場合、その段階で15%の利益が入るから、新業態に賭けるのは容易ではない。
――和民再建に向けた施策をどう評価しているのか。
ここまで凋落した一つの要因が、50億~60億円かけた店舗改装。リニューアルがいっさい好影響を与えずに、売り上げは前年割れが続いた。成果が出なければ、止めればよかったのだが、とことん続けてしまった。PDCA(計画・実行・評価・改善)が働かなかったのが失敗だ。これで大丈夫といって、会社を渡した結果、安心しすぎて脇が甘くなった。
宅食事業の工場には10億円以上の投資をした。配食数が1日25万~26万食のときに、このまま需要が伸びたら大変だと言うことで、50万食体制にした。脇が甘くない会社なら(工場を)作らない。当然、10億円が無駄になっている。危機感にどうアンテナを立てていくか、難しさを感じている。
会社の全部を自分で決めてきた
――桑原豊前社長(2009年6月~2015年2月まで在任)についてはどう評価しているか。
彼はまじめだし、優秀な人物。僕は彼に対して、安心させすぎたという反省がある。僕自身の最大の反省は、「ミッション・ビジョン・戦略」さえしっかりしていれば経営はうまくいくのだ、という僕自身の思い込みだった。
今さら分かるのか、と勉強させてもらったが、経営とか会社って、生態系みたいなもの。今までだったら、神経が脳から手に渡っていればよかったものが、その脳が変わることで、手と手とか、手と足とか、その神経系統が、横にも動き出さないといけなくなる。あまりに強い脳だと、横の連絡はいらない。全部脳から指示してしまうから。
ではなぜ、それを僕ができるかというと、優秀だからじゃない。創業者として、ゼロから1650億円まで、全部自分でやったからだ。最初は店長、3店になればエリアマネジャー、5店になれば経理部長もやる。全部自分でやってきたからわかる。すべて会社の98%を決めることができた。でも、それを同じ体系として渡したら、見えなくなった。創業者が事業継承するときは、こういうことはあるだろう。みんな同じ失敗をすると思う。
経営の一線を退く際には、外食、宅食、介護、マーチャンダイジングの4つの組織に分けて、それぞれ責任者を置いた。すると、自分の組織を見てしまい、互いに牽制機能が働かなくなった。結局、事業責任者が4人集まっただけに、過ぎなくなった。結果、50億円の改装をすると言っても、周りは止めなかった。