所得格差がもたらす日本の教育格差 リチャード・カッツ


国際的にも顕著な日本の生徒の学力低下

 こうした事柄が悪循環を生み出している。子供を私立学校に通学させている納税者は、公立学校のために税金を使うことを嫌っている。その結果、公立学校の教育の質を維持することが難しくなっているのだ。文部科学省によれば、75年から97年まで高校生1人当たりに費やされた公的支出額は3倍に増えているが、それ以降は横ばいのままである。一方で授業料に学習塾などの費用を合わせた「学習費」は年々増加して、04年では私立高校の生徒1人当たりの金額は年間103万5000円。公立高校の同51万6000円と比べ2倍もの開きがある。

 その結果、生徒の学力の差が拡大しただけでなく、他の国と比べて平均的な生徒の成績も驚くほど低下してしまった。従来、日本の生徒は教育の達成度でつねに上位にランクされていたことからすれば、これは落胆すべきことである。

 00年と03年にOECDは「国際学習到達度調査」で15歳の生徒を対象に数学、科学、読解、問題解決のテストを行った。00年から03年までに日本の生徒の数学能力は1位から6位に落ち、読解力は8位から14位に落ちている。ただ科学の分野は2位を維持している。読解力では六つのレベルのうち最低レベルであった日本の生徒の比率は、00年の2・7%から03年に7・4%に増えている。これはOECDの平均よりも悪い。対照的にトップの水準の生徒の比率はほぼ10%で変化していない。

 数学はどうだろうか。最低のレベルの日本の生徒の比率は4・7%で、OECDの比率8・2%をかなり下回っている。数学でトップ・レベルの日本の生徒の比率は8・2%で、他のOECD加盟国よりも高い。また、科学の点については、日本の生徒の上位10%は00年の調査よりもよくなっているが、逆に下位10%の点数は落ちている。

 つまり、日本の教育格差は他の国よりも拡大しているのだ。納見准教授によれば、拡大のスピードは他の国よりも速くなっているという。

 日本が依然として、世界で最も優れた教育を提供している国の一つであることに変わりはないが、最も優れた生徒の割合は減少してきている。子供の潜在能力は、親の所得と社会的な地位によってますます制約されるようになっている。こうした状況は、雇用者が必要とするスキルと、求職者が持っているスキルのミスマッチを引き起こす可能性がある。このような事態は日本の生活水準だけでなく、日本の民主主義の活力にとっても重要な意味を持ってくるはずだ。

リチャード・カッツ
The Oriental Economist Report 編集長。ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ等にも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。当コラムへのご意見は英語で rbkatz@orientaleconomist.com まで。

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