「金融緩和」の現実は、「引き締め」だった

マイナス金利が警告する黒田緩和の反作用

日銀の処方箋が適切だったかどうか、そのエビデンスを見てみよう。金融緩和は、ロジックとしては景気を刺激することになっている。しかし、2008年のリーマン・ショック以来続いてきた金融緩和、そしてその度合いを2年で2倍へと強め、今も強め続けている2013年以降の量的・質的金融緩和は、エビデンスの面からは「景気を刺激してきた」、あるいは「インフレ期待を高めてきた」とは言えないのではないだろうか。

「期待インフレ率を高めれば成長率が高まる」というロジックの代わりに、エビデンスとして見えてくるのは、①マイナス金利と②当初目論まれていた2%の実質経済成長率を下回る、ほぼ0%の成長率だ。

円のマイナス金利は金融機関同士の相対取引の中で発生しているが、その現象が短期国債市場へと波及してきている。3カ月短期国債は2014年終盤以降、慢性的にマイナス0.1~0%で取引されており、2015年11月には、1年国債が一時的にマイナス0.15%をつける局面もあった。

円金利のマイナス化=ドル金利の上昇

そこからわかることは、量的緩和によって増加した円の流動性が、円金利のマイナス化、裏を返せばドル金利の上昇という形で、引き締め的に作用しているということだ。

円のマイナス金利はどうやって発生するのか。邦銀はドル資金を調達するときに、海外金融機関との間で円とドルを貸し合うという形をしばしば選択する。

金融緩和で市場に円があり余っている状態では、円金利が大安売りされてしまう。大安売り、すなわち金利の値引きが高じて、円金利はマイナスになってしまったのである。

ドル資金が必要な邦銀や海外事業をしている企業にとって、円金利の値下がりはドルの調達コストの上昇と同じことだ。それはこのような日本企業にとって、実質利上げである。日本企業は、金融緩和政策のおかげで、実質的な金融引き締めに見舞われているのである。

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