「金融緩和」の現実は、「引き締め」だった マイナス金利が警告する黒田緩和の反作用
その実質利上げは、米国FRBが今後、利上げを行うかどうかに関係なく、日本企業にすでに降りかかっている。
「ロジックは正しかった」では済まされない
社会経済現象、特に金融政策を含むマクロ経済政策については、統計学的アプローチが難しい。
いちばんの理由はサンプル(標本)数が足りないことだ。G7のうち3カ国は通貨がユーロであるため、G7内の通貨は5つしかない。統計学には「自由度」というサンプル数を表す概念があるが、自由度が5しかないと、統計学的な分析がかなり厳しいことも事実だ。
また、マクロ政策の効果を把握するには時間もかかり、各国固有の背景や制度が異なるという事情もある。
そうした困難さをいいことに、マクロ経済政策ではエビデンスよりもロジックがいつまでも幅を利かせてしまっているのだ。
しかし、ロジックに疑問を呈するようなエビデンスが出ているのに、金融政策を方向転換する兆しは見えない。
金融市場で働くトレーダーやディーラーの多くは、統計学という認識はなくとも、統計学的アプローチを自然にとっている。
ロジックを考えてある取引を行って、そのとおりに市場が動かず損失を出してしまったら、「ロジックは正しかった」では許されない。出してしまった損失は戻らなくとも、ストラテジーを練り直さなければ、新しい取引をさせてもらえない。そのストラテジーは、起こったことを正面から受け入れ、エビデンスを土台にして作り上げられる。
もちろん自由度に限りがある金融政策を、教科書的な統計学的アプローチで考えるのは不可能だ。しかし、エビデンスに沿った新しいロジックを見出すことで、足りない自由度を補うことはできるだろう。マイナス金利の発生は、そうした転換の必要を警告しているのだ。
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