ガラパゴスゾウガメを「弁当」扱い、庭の昆虫を食べる 実は悪食王の《科学者ダーウィン》…因果応報な死の原因とは
南米とガラパゴス諸島を航海する乗組員にとっては、毎日が食の冒険だったにちがいない。ダーウィンはパンパスジカ、ラマ、アンデスコンドル、キツネを食卓に載せた。
イグアナは「ひどく醜く」「外見が非常に間抜け」だが、「偏見を……食欲の力でひらりと飛び越えられる向き」には美味な食材だった。
ピューマは「味わいが仔牛に非常に近く」、アルマジロは不思議なことにアヒルのようだった。「これまでに口にしたなかで最高の肉」と讃えた南米の齧歯類は名前がわかっていないが、アグーチだったのではないかと現代の研究者はみている。アグーチはカピバラとリスが作った赤ん坊のような見た目の動物で、悪臭を放つが美味らしい。
鳥の標本を残飯からつくる
ダーウィンの場合は食欲が仕事の妨げになることさえあった。ダーウィンの功績とされる画期的発見のいくつかは、「たゆまぬフィールドワーク」ではなく「おいおい、チャールズ、そいつは食わずに自然史博物館に送ったほうがいいぞ。新種なんだから」の結果だった。
たとえば飛べない鳥のレッサー・レアが「ダーウィン・レア」として知られるのは、ロンドンに最初に届いた標本がダーウィンの残飯からできてきたからだ。科学の発展のために見つけて記録し、分類しようと何カ月も探しつづけてようやく仕留めた一羽を、ダーウィンは別の鳥とかんちがいし、今夜はこれで夕飯を作ってくれと料理番に渡してしまった。
そして乗組員が和気藹々と鳥を食べ、おかわりを所望しはじめたところでようやく過ちに気づいた。あわてたダーウィンは尻に火がついたように厨房と食堂を走りまわって全員の皿を回収し、骨といわず内臓といわず羽といわず、元鳥の残骸を手当たり次第に集めてロンドンの剥製師に送った。

















