ウエルシアとツルハが経営統合「ドラッグストア戦国時代」に大手同士が手を組み〈巨大チェーン〉が登場した納得事情

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縮小

これに対して、スーパーは小さめでも6億円、大手ドラッグストアのドラッグ商材は2~3億円の損益分岐ラインになっている。つまり、フード&ドラッグは、スーパーより食品が売れなくても、一般的ドラッグストアよりドラッグ商材が売れなくても、十分に存続することができるということになる。これが意味することは、縮小する国内市場、特に地方において、最後まで残れる生活必需品業態としての位置づけを確立している、ということなのだ。

フード&ドラッグの代表格であるコスモス薬品の地域別売上の推移を見てみると、進出したエリアでひたすら店舗数が増えていき、そのエリアのシェアを奪い続ける様子がわかるだろう。

これは他のフード&ドラッグでも同様である。彼らは九州、北陸地盤から東日本方面へと粛々と勢力拡大を続けているのであり、関東地盤のウエルシア、東日本地盤のツルハとの本格衝突はこれからと言ってよいだろう。

これまでも、フード&ドラッグの脅威に対抗するため、西日本の地方ドラッグストアがウエルシアやツルハの陣営に駆け込んだという構図もある。2兆円企業、新ツルハはその最大の武器である規模の利益を実現した上で、食品流通の最大手イオンと組んで、フード&ドラッグの進撃を阻止しなければならないのである。

新ツルハが真の業界覇権を確立するまで

イオングループでは、イオン九州とウエルシアが共同出資でイオンウエルシア九州を設立し、スーパーとドラッグストアが融合したウエルシアプラスを開発して、現在では16店ほどを出店し、拡大しようとしている。

また2025年9月には、関東では茨城で、ウエルシアのドラッグ&フード戦略推進店舗を9店舗投入することが明らかにされている。これはイオングループにとって、フード&ドラッグ各社が脅威であると認識していることの裏返しであろう。

さらに言えば、新ツルハの時価総額は、収益力業界トップのマツキヨココカラにまだまだ及ばない(イオンの時価総額は6.7兆円と1年前からは倍増しているが、その要因は新ツルハ効果だけではないだろう)。2兆円企業のイオン系となるドラッグストア、新ツルハが真の業界覇権を確立するには、強豪ぞろいの決勝リーグを勝ち抜いてからの話なのである。

中井 彰人 流通アナリスト

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なかい あきひと / Akihito Nakai

みずほ銀行産業調査部で小売・流通アナリストに12年間従事。2016年同行を退職後、中小企業診断士として独立、開業。同時に、ベンチャー支援活動、地方創生支援活動を開始。並行して流通関連での執筆活動を本格化し、TV出演、新聞、雑誌などへの寄稿、講演活動などを実施中。2020年よりYahoo!ニュース公式コメンテーター、2022年Yahoo!ニュースエキスパートを兼務。主な著書「図解即戦力 小売業界」(技術評論社)、「小売ビジネス」(クロスメディア・パブリッシング)。現在、東洋経済オンライン、ダイヤモンドDCSオンライン、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+IT、プレジデントオンライン、新潮フォーサイト、などで執筆、連載中。

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