オーダーについても回転率アップのため、410店舗でタッチパネルを導入済。これまで、スタッフが忙しい際に注文をためらった客がスムーズに注文できるようになったことや、飲みの席で、一人が人数分のお代わりを一気にオーダーできるようになったことから、注文が急増した。特にアルコールの売り上げは、月額1億円も増えている。
配膳ロボットもロードサイドの大型店を中心に67店舗に導入。これらの相乗効果で、回転率の向上はもちろん、人件費削減にも貢献している。
ちなみに、このような施策を指揮する青野社長は、1993年に日高屋でアルバイトを始め、6年間の現場経験を経て正社員になった生え抜きだ。
「私が社員になった1999年頃は、山一証券やそごうが経営破綻し、何を信用していいか分からない時代でした。でも、経営計画発表会で会社の方向性を聞いて、『この会社は向こう10年は伸びる』と確信して入社を決めました。成長性がある会社であり、自分も年齢と共に成長できると感じて選んだのです。その選択は間違っていなかったと思います」
入社した理由を青野社長はこう語る。現場を知り尽くした人物だからこそ、机上の空論ではない改革ができているのだ。
またDXとは真逆だが、日高屋では「勘」も大事にされている。出店について、最終的な出店判断を下すのは今も創業者の神田会長。84歳の今も現地へ足を運び、「カンピュータ」とも言われる独特の感性で出店を判断しているというから驚く。
「乗降客数3万人以上、出口の数、ライバル店の有無など基本条件はありますが、そうでなくとも神田独自の勘が働いて、GOサインを出す場合があります」
意外なことに、一番重要な判断材料は「店の前にサンプルケースを置けるかどうか」だそうだ。理由は、安心感を与えられるから。客は初めて入る店には不安を覚えるもの。そのときサンプルケースがあれば、メニューと価格が明確に分かる。サンプルケースが店前に置けない場合も、店外からガラス越しに見える場所に必ずサンプルケースを設置している。
「印象に残りすぎないおいしさ」をジャッジ
もう1つ、日高屋の年商を大きく引き上げているのが、リピーターの存在だ。そのリピート率は非常に高く、週に2、3回通う常連もいる。もちろん低価格もその理由だが、リピーターを呼ぶ決め手は味にある。
「よくすき焼きに例えるんですが、おいしいすき焼きを毎日食べられるかといったら、食べられない。たまに食べるからおいしいんです。もちろん人によって味覚は異なりますが、10人食べて6人が『おいしいと印象に残りながらも、残りすぎない味』を重視しています」
万人受けする味付けながらも、少しだけ、「やっぱりこれおいしい」と感じられる。そのさじ加減が非常に難しいところだそうだ。
味は商品部が決め、最終、青野社長と神田正会長、営業部メンバーが試食してジャッジする。「印象に残りすぎるおいしさ」だった場合、ゼロからリセットすることもある。
また、ラーメン店でも中華料理店でもない「食堂」であることも、「万人受け」に重要なポイントとなっている。
そもそも日高屋は、ハイデイ日高が中華料理店としてオープンした『来来軒』と、全国のご当地ラーメンを提供していた『ラーメン館』をミックスして誕生したブランドだ。
前者2ブランドがうまくいかなかったことから、中華料理店とラーメン店の間を埋める、「いろんな方がいろんなシーンで利用できる」業態として生まれたのだ。ラーメンや餃子はもちろんだが、日高屋には、イワシフライや砂肝などもある。食堂であれば、あってもおかしくない。



















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